資料4

開発課題名「超小型近赤外分光計測装置の開発」

機器開発タイプ(領域非特定型)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  川島 隆太【東北大学 加齢医学研究所 教授】
サブリーダー :  荻野 武【(株)日立製作所 新事業開発本部 マネジャー】
中核機関 :  東北大学
参画機関 :  (株)日立製作所
T.開発の概要
光トポグラフィ技術は、日本発の小型簡便な無侵襲脳機能画像計測技術であるが、これまで多人数の同時測定は不可能だった。本開発では、無線通信化された超小型近赤外分光測定装置を開発して20人までの同時計測を行い、‘複数脳の相互作用’・‘複数脳の共鳴’の解明を目指す。本開発により脳科学や認知心理学にブレークスルーをもたらし、教育現場への応用も期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)20人同時計測性能保証、並びにアプリケーションニーズ収集整理、機能仕様作成
 開発したプロトコルをヘッドセットに実装し、無線等が飛び交う環境下で半径20mに散在した20人の被験者を対象にヘッドセットを装着し、同時計測実験により所定の性能を確認した。また、20人同時計測により、リアルタイムに脳活動に起因する脳血流量変化を可視化するとともに、データ収集後、研究に効率的にデータを活用できるように各種研究情報とともにリレーショナルデータベース機能を具備した機能仕様書を作成している。
(2)認知的かまえの同期に注目した集団脳活動評価
  健康な右利き学生を対象にfMRI計測の結果、認知的かまえの神経基盤として、課題直前の活動が認知パフォーマンスと相関する領域が同定できた。額面からの計測が可能な部位を、開発装置による認知的かまえの読み取り領域として定め、同時計測による集団作業時の脳活動同調評価実験を行っている。その結果、負荷が変動するような集団認知的作業時に、参加者間の脳活動も有意に同調することが示されており。本研究により、脳活動からの認知的かまえの読み取りとその同調性に基づいた集団作業の評価・支援に対する開発装置の有効性と将来性が明らかにさている。
(3)現実的作業環境における集団脳活動評価
原子力プラント運転員が実際に訓練を行っているBWR運転訓練センターにおいて運転訓練を行っている最中の4名の熟練インストラクタの集団脳活動計測を行っている。実測の結果、シミュレータ室内を歩き回っている4名の被験者の脳活動を同時に計測出来ることを確認している。同じ環境と被験者、シナリオを用いて行った計測の結果、脳活動の傾向が一部異なる被験者が確認されたが、大局的な脳活動の変化は十分に開発装置により計測可能であることを確認している。
V.評 価
脳機能を無侵襲に計測し、画像化する近赤外光を用いた新たな計測装置を目指した機器開発である。東日本大震災により、一部の開発目標は達成できなかったが、超小型の光トポグラフィ装置を開発し、同時に多人数(20名)の脳活動を計測し、複数脳の相互作用などを研究できるシステムの開発に成功した。今後は本成果が研究現場、教育現場等で利用される機器として実用化されることを大いに期待したい。本課題は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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