資料4

開発課題名「超高速テラヘルツ波品質管理センサーの開発」

機器開発タイプ(領域非特定型)

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  谷 正彦【福井大学 遠赤外領域開発研究センター 教授】
サブリーダー :  西澤 誠治【(株)先端赤外 代表取締役社長】
中核機関 :  福井大学
参画機関 :  (株)先端赤外
T.開発の概要
非破壊、非侵襲、非接触での全製品検査は製造現場における積年の課題であるが、これに応え超高速テラヘルツ波品質管理用センサー(多チャンネル)を開発する。本開発では、製薬会社と連携して、インラインでの異種薬剤・異物混入検出のための品質管理センサーを目指し、独自サンプリング技術で超高速化と、2 桁以上の高感度化を図る。その応用分野はテラヘルツ波を透過するさまざまな工業製品に幅広く展開され得る。
U.事後評価における評価項目
(1)差周波同期サンプリングによる超高速化技術の開発
 レーザーの出力は400mW以上,パルス幅は約400fs、分散補償最適化後は約150fs(ただし分散補償素子挿入後は損失により出力約50mW)である。一方、タイミングジッターは増幅自然放出光によるレーザーの立ち上がり揺らぎは外部光帰還法により約1ps程度に低減することができたが、トータルのタイミングジッターは約10psであった。レーザーの出力、パルス幅については目標が達成された。タイミングジッターについての目標達成は不十分であるが、トリガー回路の改善によりタイミングジッターを1ps程度に抑制することは可能である。
(2)高効率・高感度光伝導アンテナ開発
  温度制御付PPLN結晶を第2高調波発生(SHG)素子として用い、最適条件において、1.55μmのレーザー光を780nmに変換し、パワー変換効率で最大約37%を得た。また,SHG素子を組み込んだモジュールをプロトタイプ機に実装した。
(3)実装技術開発
異物混入を模擬した錠剤(金属細線,金属片付着試料)について,正常剤と比べて明らかな波形変化を実際のリアルタイム検査に要求される100ms以内の測定(40ms/scanの2回積算)により観測することができた。
(4)解析ソフト開発
測定スペクトルのデータを蓄積することができ、基礎スペクトルデータベースを構築することができた。品質管理解析ソフトシステムについてはそのソフトウエアと実測データを応用ユーザに提示し、十分実現可能の域に達しているとの評価を得た。
V.評 価
透過性の高いテラヘルツ波を用いたセンサーにより、錠剤の製造ラインにおける異物混入他を非侵襲・リアルタイムに検知することを目的とした機器の開発を目標としている。本開発による差周波同期サンプリングは1台の繰り返し周波数可変のフェムト秒レーザーを使い、従来の非同期式光サンプリングの欠点を克服している。また本システムではすべて電子制御なので、信号対雑音比の低下はあるものの、波形取得速度1ms/scan以上、遅延時間幅1ns以上が可能となった。大量のサンプルを同時に計測するために複数の検出器を並べ、多チャンネル化するシステムについては加速し、製品化する方向で進んでおり、既に複数のユーザにプロトタイプ機の評価を依頼し、問題点の克服と改良に取り組むなど、早期の市場投入が期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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