資料4

開発課題名「高アスペクト比X線格子を用いた位相型高感度X線医用診断機器の開発」

機器開発タイプ(領域特定型)
【応用領域】人体内の臓器、病態、脳の高次機能などの無・低侵襲リアルタイム高解像度3次元観察、及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析

開発実施期間 平成19年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  百生 敦【東北大学 多元物質科学研究所 教授】
サブリーダー :  長束 澄也【コニカミノルタエムジー(株) 開発本部
画像応用開発チームリーダー】
中核機関 :  東北大学
参画機関 :  コニカミノルタエムジー(株)、兵庫県立大学、埼玉医科大学
T.開発の概要
コンパクトなX線源を用いて構成する実用型高感度X線撮像装置を、X線吸収格子を用いるX線Talbot-Lau 干渉法に基づいて開発する。X線位相情報によりコントラストを生成し、従来X線画像を大幅に凌駕する画像を身近に提供する。これにより、リウマチなどの関節疾患や乳癌が従来に無い精度と信頼性で診断できる医用画像診断装置の実用化につなげる。また、非破壊検査装置や荷物検査装置など、他のX線画像分野への広範な波及効果が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)マルチラインX線源 
 タングステンおよびモリブデンの回転陽極の表面を巻くように、周期300μm、溝幅200μmのストライプ構造を形成した。X線源を運転する際の出力としては、5.4kW(60kV、90mA)である。また、回転陽極は水冷方式なので、医療用で使われるフラッシュ方式とは異なって連続運転可能である。コニカミノルタエムジーが試作する医療目的の装置には本X線源は使用しないこととなったが、開発したマルチラインX線源は(株)リガクと東京大学が共同で開発し、受注生産を予定している。
(2)X線回折格子の製作
  X線マスクについて:UV方式において、炭素を膜とする新規X線マスクを考案し、さらに精度の向上が見込めるICP(誘導結合プラズマ)方式で、高精度X線マスクを実現した。
X線吸収格子について:面積10cm角では所定のピッチ精度、均一性、パターン厚を持つX線吸収格子を開発した。面積6cm角ではより良いピッチ精度を持つX線格子が作製出来、良好なイメージング画像が取得できている。
(3)リウマチ診断用試作機
軟骨等の観察において欠陥・スジ・ムラの無い5cm角の実効視野を達成し、臨床撮影において、4.8mGyにて鮮明に軟骨描写が可能なことを確認した。縦型レイアウトの装置形態を実現し、操作用PCの画面を含め、臨床現場に導入可能な操作性を具備した臨床研究用撮影装置を完成した。本装置により健常者ボランティアの撮影において、従来のX線画像では不可能な関節軟骨の描出を確認し、本方式による軟組織描出性を実証した。また、関節リウマチ患者の撮影に付いても実施しており価値ある臨床データを取得している。
V.評 価
Talbo-Lau干渉原理を用いた位相型高感度X線医用診断機器の開発において、干渉計シミュレーター、リウマチ診断用試作機、X線格子製作技術およびマルチX線源の開発において、全て目標を達成した。さらに、X線格子製作においては、新たな製作プロセスを開発することによって、目標以上の性能を持つX線格子の作製に成功している。適用例も多く開示されており、本開発成果の有効性は十分に検証されたと言える。今後は医用機器として臨床応用するため、データの蓄積をすすめるとともに、材料の非破壊検査等、本成果の多様な方面への応用を期待したい。本課題は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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