チームリーダー : | 丸山 厚【九州大学 先導物質化学研究所 教授】 |
中核機関 : | 九州大学 |
参画機関 : | 東京大学 名古屋大学 |
- T.開発の概要
- 遺伝子診断の汎用性を広げるためには、簡便性、迅速性、信頼性を向上させる必要がある。本課題では、試料採取から識別、検出まで遺伝子解析に要求される操作において総合的に信頼性と迅速性を高めるためのシャペロン材料を提供することを目指す。
- U.中間評価における評価項目
- (1)DNAチップ法の迅速化
- 識別時間の短縮:識別時間の短縮(2時間以内)の目標に対して、0.5時間と設定目標を大幅に上回って中間目標を達成した。ただし、現状では多サンプル同時(マルチプレックス)解析ではいくつかのサンプル(一塩基多型(SNP)サイト)については識別不能であった。PCR条件の最適化やプローブデザイン等を検証し、識別効率を向上させる必要がある。
- (2)DNAチップ法の簡便化
- ステップ数は、5 ステップと設定目標を達成し、5ステップでの解析が可能であることを示した。尚、識別効率を高めるための最適化を行う必要がある。試薬数は目標に対して、11個と概ね設定目標を達成した。目標を達成するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件を中心に検討する。
- (3)他の遺伝子解析への波及
- PHFA(preferential homoduplex formation assay)の降温速度依存性の緩和については降温速度20 ℃/分以上の目標に対して、降温速度96℃/分とモデルDNAサンプルでは大幅に数値目標を上回った。今後多数のDNA配列及び実検体において検証する必要がある。分子ビーコン法の反応速度については10倍以上の加速目標に対して、約100倍の加速とモデルDNAサンプルでは、大幅に数値目標を上回った。今後多数の実検体において検証する必要がある。
- V.評 価
- ポリアニオンであるDNAにカチオン性共重合体(シャペロン材料)が相互作用する性質を利用して、SNP解析や病原菌、ウイルス感染の検出を迅速かつ簡便に行うことができる方法を開発することが目的である。モデルDNAサンプルでは目標を超える成果が得られ、SN比の飛躍的向上や、シャペロン合成に有用な刺激応答性高分子材料の開発が特許申請に結びつくなど、目標を超える成果を上げている。各ステップが目標値を超えており、今後は、一体化したシステムの完成と、実際の未知混合試料での性能評価を期待する。成果の実用化を早期に達成するべく、さらなる性能の高性能化を図るよう、開発を積極的に推進すべきである[S]。