資料4

開発課題名「埋め込みターゲットを有するX線管球の開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  志村 考功【大阪大学大学院 工学研究科 准教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)リガク
T.開発の概要
 透過型X線撮像装置は物質の内部を非破壊で観察できることから医療用だけでなく、研究開発や生産現場における非破壊観察・検査用機器として広く普及している。特に最近では製品に要求する高い安心・安全性のため、非破壊検査装置としての役割が期待されている。本課題では、埋め込みターゲットを有する小型微小焦点X線管球、新規ターゲット材X線管球、小型位相コントラスト撮像装置用管球を開発し、その高度化、低コスト化を実践することを目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)開発項目の絞り込み
 当初、本開発課題では、5μmの微小埋め込みターゲット、ランタン埋め込みターゲット、タルボ・ロー干渉計用マルチライン型埋め込みターゲットの3つを開発する予定であったが、期間中に全てを開発することには無理という、評価委員会の指摘により、微小埋め込みターゲットの開発に絞り込んだ。
(2)微小焦点X線ターゲットの試作
 埋め込みターゲットへの最大投入電力について3次元有限要素法による熱伝導計算を行い、実験結果と比較してその妥当性を確認した。また、埋め込みターゲットについても電子線照射領域を小さくすることが重要であることがわかった。基板にダイヤモンドを用いた微小ターゲットを3種類試作した。予備実験の結果、電子線照射領域の1/3程度の大きさまでは基板に埋め込んだ金属ターゲットの大きさで実効焦点サイズを小さくできることがわかった。しかし、1/80の大きさのターゲットではダイヤモンド基板からの制動X線の影響のため、分解能の高い像を得ることはできなかった。
(3)タルボ・ロー干渉計用マルチライン型埋め込みターゲットの試作の検討
微小焦点X線ターゲットの開発に関しては、本開発課題とほぼ同内容で、他企業中心の開発プロジェクトが先行した成果をあげていることが判明したため中断し、マルチライン型埋め込みターゲットの試作を行うこととした。タルボ・ロー干渉計に必要な位相格子と吸収格子の仕様に合わせたライン幅、ライン周期のターゲットを設計し試作した。
V.評 価
本開発課題は、ターゲットとなる金属材料を微小化して炭素やホウ素などの軽元素中に埋め込み、微小な焦点のX線を発生するX線管球を開発することである。当初計画では、微小ターゲットの他、ランタンをターゲットとしたもの、タルボ・ロー干渉計用のターゲットの合計3種類の開発を推進する予定であったが、3.5年間の期間中には全て達成することが難しいことから、銅の微小ターゲットのみに絞り込み開発を進めるよう指導した。しかし、試作した微小ターゲットは、基板からの制動放射の影響が大きく、改良を加えても実用に耐えるものを開発できないと判断した。一方、開発初年度に、企業を中心とする他グループが同等の内容で先行した成果を上げていることが判明し、本開発課題の独自性を出すため、タルボ・ロー干渉計用のマルチライン型ターゲットを試作すべく、方針を変更した。しかしながら、微小ターゲットの結果から推測して、X線出力の問題と制動放射によるバックグランドの問題を解決出来る見込みがなく、また、時間的な制約もあることから、現時点で成功の見通しが困難であると判断した。これらのことからこれ以上継続しても目標達成は困難と考えられ、残念ながら本課題においては本事業での継続を見合わせるという苦渋の判断をせざるを得ない。今後、本開発課題で得た知見を活用し、着実な基礎的データを積み重ねた上で本格的な開発に臨むことを期待したい[C]。


前のページに戻る