資料4

開発課題名「アルミナ基プロトン導電体を用いた溶融金属用水素センサの開発」

(平成22年度採択:機器開発タイプ【領域非特定型】)

チームリーダー :  武津 典彦【名古屋工業大学 おもひ領域 プロジェクト教授】
サブリーダー : 大島 智子【(株)TYK 機能材料研究所 主任研究員】
中核機関 :  名古屋工業大学
参画機関 :  (株)TYK
T.開発の概要
 金属素材製造プロセスでは溶融時に水素が溶解し、製品欠陥の発生や材料特性の劣化を招き、そのモニタリングは重要である。最近開発したアルミナ基プロトン導電性固体電解質を用いて濃淡電池を構成する方法で1,300℃付近の高温金属融体中の水素量を連続的にその場測定するための産業用センサプローブおよびセンシングシステムの開発を目指す。本センサは現状ではこのような高温の金属融体中水素量を連続的にその場測定することができる唯一のデバイスであり、大量に製造される基盤工業材料の品質を強化し、製造過程での省エネルギー、CO2削減を達成する上で強力な武器となることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)センサプローブ用電解質の開発
 実験室系において、アルミナ系プロトン導電性固体電解質におけるプロトン伝導性係数を確定するため、センサ中の保護管に固体電解質を封入し、空気を標準極としたガス濃淡電池を構成して、1,073〜1,373Kの範囲でアルゴン-水素混合ガスの起電力測定を行った。その結果から、伝導性パラメータを決定する理論式を導出した。
(2)連続測定型センサプローブの開発
 センサプローブ用標準極、測定極集電体を開発した。標準極については作成作業の手順書を完成し、制御ユニットは設計図を完成した上で試作品を仕上げた。集電体についてはステンレス鋼に酸化被覆膜作成処理を行い、1,150℃のタフピッチ銅に浸漬し、24時間後に走査電子顕微鏡観察を行い、全く損傷がないことを確認した。
(3)消耗型センサプローブの開発
酸化銅系のセンサプローブを試作し、1,150℃で水素分圧10-7bar以下を5分以上保持でき、目標を達成できたが、全圧が1気圧以上となってシール層が破壊されるという問題が生じた。この問題を解決するため、新たに酸化アルミニウムを加えて酸化銅系センサプローブを開発した。
(4)試作センサを用いた実環境試験
連続測定型センサプローブを、製造現場で試験するため、関連企業に試験場所の提供を依頼し、依頼した8社中6社から承諾を得た。これらの現場において開発したセンサの動作試験を行った結果、計測時の安全確保、計測中のセンサ汚損・溶出による製品の汚染等の問題があることが判明した。また、測定以前にセンサを融体に浸漬した際の熱衝撃で電解質が破壊されるトラブルも起こることが判明した。これらの原因につき、現在解析中である。
V.評 価
 金属素材の製造過程で、製品の質を劣化させる原因である水素の濃度を製造ライン中でモニタリングするためのセンサの開発である。連続測定型センサの実験室系における試験では、予定通りの成果を上げ、完成した試作品で複数の製造現場において試験を行い、実データを取得したことは評価に値する。しかし、現時点でのセンサは実際の製造ラインで熱破壊が起こるなど、実用とするまでには改善すべき点が多い。また、当初目標に掲げていた消耗型センサについては、試作品の完成に至っておらず、チームのさらなる努力を期待したい。今後は、連続測定型センサの実用に向けた改良を行い、さらに製造現場での試験を繰り返して信頼性を上げるとともに、消耗型センサの開発も効果的・効率的に推進すべきである[B]。


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