資料4

開発課題名「次世代質量イメージングのためのUVマイクロチップレーザーを用いた計測システムの開発」

(平成22年度採択:機器開発タイプ【一般領域】従来の特性を進化させた高性能レーザーを用いた計測分析システム)

チームリーダー :  平等 拓範【自然科学研究機構 分子科学研究所 准教授】
サブリーダー : 古川 保典【(株)オキサイド 代表取締役社長】
中核機関 :  自然科学研究機構
参画機関 :  (株)オキサイド
東京工業大学
T.開発の概要
 実用的高性能紫外(UV)レーザーを、高輝度マイクロチップレーザーと高性能非線形波長変換といった最先端のレーザー技術「マイクロ固体フォトニクス」で実現し、高感度かつ非破壊的光イオン化による質量分析のためのUVマイクロチップレーザーを開発する。本廃発により、ボロンなど従来微小領域からの検出が困難であった元素や環境負荷分子の質量マッピングが可能となり、先端鉄鋼材料や有機薄膜太陽電池などの粒界偏析まで分析可能な次世代質量イメージング装置の実現が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)検証用レーザーの開発
 ネオジム及びクロムをドープしたYAG(イットリウム-アルミニウム-ガリウム)を素子に用いた受動Qスイッチ型マイクロチップレーザーを構築し、波長266nmでパルスエネルギー300μJ以上、最小パルス幅400ps以下を繰り返し周波数100Hzで得ることを目標とした。まず、1,064nmの基本波レーザーを開発し、光学結晶(LBO及びBBO)でSHG(第二高調波発生)、FHG(第四高調波発生)特性を評価した。その結果、266nmで511μJ、265psで繰り返し周波数100Hzとなり、目標を達成した。
(2)実証用レーザーの開発
 波長1,064nm、パルスエネルギー1mJ以上、尖頭値出力2MW以上、サブナノ秒のパルスで繰り返し周波数1kHz以上を目標として、加えてネオジムドープしたイットリウムとバナジウムの酸化物(Nd:YVO4)、クロムをドープしたYAG(Cr:YAG)を素子とした受動Qスイッチ型マイクロチップレーザーについて検討した。炭化けい素(SiC)を用いたアクティブミラー型構成、励起構成の最適化によって目標を達成できる見込みを得た。加えてNd:YAG/Cr:YAGで構成した固体素子の開発により、尖頭出力0.5MW、パルス幅800ps、繰り返し周波数1kHzを達成した。この値は現時点での世界記録である。掲げた目標も予定通り達成の見込みである。
(3)イオン化効率簡易測定装置の開発
 開発したレーザーを質量分析イメージングに適用するため、波長266nm、繰り返し周波数100Hzのレーザーで簡易イオン化効率測定装置を開発し、動作確認を行った。266nmの二光子吸収でイオン化が可能なガスを一定圧力でガスセルに封入し、電圧を印加した電極板間に流れる光イオン化電流を測定してイオン化効率を測定する装置とした。本装置の動作確認・最適化を行い、開発したレーザーのイオン化効率を測定することで、二光子イオン化に最適なパルス幅を決定した。
V.評 価
 高感度な質量イメージングのための小型かつ高出力のUVマイクロチップレーザーの開発である。開発は順調に進捗し、検証用レーザーによる実験から、用いる結晶の性能等を確認し、実証用レーザーを用いて装置の構成を決定した上で、現時点での小型マイクロチップパルスレーザーとしての出力等の性能で世界最高値を出したことは高く評価できる。また、このレーザーを質量イメージングに適用するために必要なイオン化効率の簡易測定装置も作成し、最適化を行っている。今後は質量イメージング機器を開発しているユーザーと連携し、本レーザーを用いた質量イメージングデータを取得して検証を行うとともに、我が国が海外製品に遅れをとっているレーザー分野で市場を確保していくために、さらなる高性能化を図るよう、開発を積極的に推進すべきである[S]。


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