資料4

開発課題名「高感度脂質分析のための質量分析技術に関する調査研究」

要素技術タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  裏出 良博【(財)大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門
研究部長】
中核機関 :  (財)大阪バイオサイエンス研究所
参画機関 :  なし
T.開発の概要
チームリーダーらは、生理活性脂質の一種であるプロスタグランジンD2の尿中代謝産物が神経筋疾患のバイオマーカーとして利用できることを見出し、尿などの臨床試料中の脂質成分を測定するための質量分析技術が有効であることを証明した。しかし、現在の装置は大型であり、汎用性が低い点が問題である。そこで、分析対象を低分子量の脂質に限定した高感度の小型質量分析デバイスの開発につながる要素技術として、前処理やイオン化条件の最適化を含めた新規インターフェースの調査を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)前処理流路のマイクロチップ化
 現在の前処理条件の最適化と高スループット条件下での前処理性能を評価するためには、前処理チップの性能以上に試料導入部や、イオン化部の構造や性能によるデータの不均一性が不確定要素として問題となった。この問題に対処するために、前処理チップの試作に着手する前に、これらの流路インターフェースの再検討が必要であるとが判明した。
(2)イオン化条件の検討及び評価
本調査研究では、導入MSのジオメトリ制限が存在するため、大気圧化学イオン化法(APCI)、電界脱離イオン化法(FD)、大気圧光イオン化法(APPI)の評価機設置が現状では困難であった。そこで現在のエレクトロスプレーエミッターから専用エミッターを導入して条件検討を行った結果、前処理チップ試作に必要な要素技術の評価条件が準備できた。
(3)質量分析装置の仕様設定
本調査研究を進める上で、試料導入部の変更を考慮し、小型、可搬性のある質量分析装置が必要であると判断し、以下に仕様を決定した。
・装置サイズ:500×460× 250 mm (突起部のぞく)
・重量:30.0 kg程度
・質量分析方式:飛行時間型 リフレクトロン型 飛行長 約500 mm
・質量範囲(Da):1−3000、分解能 2500以上、
・加速電圧:0−6 kV二段加速方式
・検出器 :2段マルチチャンネルプレート(MCP)

  上記の仕様をもとに実際に試作機の開発と改良の設計等を担うことができる業者をリストアップした。
V.評 価
臨床試料中の脂質成分の検出に特化した小型で汎用性の高い質量分析装置の開発を行うため、前処理工程等、要素技術開発の仕様等を定めるための調査研究を目的としている。筋ジストロフィー患者の進行度合いをチェックするマーカーがすでに見つかっていて、これを正確に計測できる小型のMS装置が実現できれば、医療現場でのニーズに大きく貢献出来ることが期待される。その一方、流路インターフェースについては試作され、各部の設計までは行われているが、装置全体が本来満たすべき仕様に対して従来の装置ではどの程度の結果が得られており、本調査研究での試作・検討結果は、目標とするレベルを満足しているかが不明確である。今後、本格的な装置開発に挑戦するに当たっては、最終的な目標を見据え、実効性高く仕様を仕上げることを期待したい。


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