資料4

開発課題名「二酸化炭素モニタリング用超小型計測装置」

プロトタイプ実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  植松 彰一【矢崎総業(株)技術研究所 電子デバイス研究部 部長】
サブリーダー :  井上 元 【人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 教授】
中核機関 :  矢崎総業(株)
参画機関 :  人間文化研究機構
京都大学
北海道大学
名古屋大学
明星電気(株)
T.開発の概要
温室効果ガスとして最も重要な二酸化炭素(CO2)の大気中高度分布が計測できると、大気濃度の将来予測に重要な要素であるCO2発生と吸収の評価の精度を飛躍的に向上させ、気候変動予測の精度を高めることが可能となる。その目的に合致した超小型赤外分光式CO2センサーの量産体制化を行う。また、気球計測が可能であり、地上においては多数の学校に配置し、CO2地域分布マップを描く環境教育ネットワークを構築できる仕様とする。
U.事後評価における評価項目
(1)二酸化炭素濃度計の精度と確度、高度分解能(応答時間)の向上
 ゾンデ用二酸化炭素センサーとして、濃度換算に必要な4.0μm出力と4.3μm出力の分解能が0.15ppm相当となった。ゾンデ用二酸化炭素濃度計として精度1ppmを達成するためのセンサーを開発した。なお、精度としては、標準偏差1ppm(16秒積算)を達成した。また、センサーに送るガスを30〜40秒ごとに切り替え、ゾンデの上昇速度を調整することで、250m〜300m程度の高度分解能を達成した。
(2)気圧低下に伴う測定精度低下問題の解消
 ゾンデにリファレンスガス(CO2 370ppm標準ガス、CO2 400ppm標準ガス)を搭載し、上昇時に、大気とリファレンスガスを交互に計測する仕組みとした。リファレンスガスの計測結果を基に大気のCO2濃度を算出するため、上空の減圧下(高度10km、気圧200hPa)でも計測が可能になった。
(3)装置の実用化開発
試作機で合計5回(11球)の放球を実施し、この結果を踏まえて量産試作機を製作、量産試作機で3回(6球)の試験を実施した。量産試作機では高度10kmまで、高度分解能250〜300m(60〜80秒ごと)、精度1ppmで二酸化炭素濃度を計測することができた。水平移動距離250km以上で、地上においてゾンデからのデータを受信可能である。重量1000g、サイズ28×27×14cm、電力消費量4.5V−1.0A、18V-0.2Aとなった。リファレンスガスを搭載することで実用可能な性能を達成した。
V.評 価
光吸収法による二酸化炭素測定装置を大気上層部で、必要な精度を保持する測定系とする機器の実用化開発が目的である。装置試作を行い、これを放球試験して検証することを繰り返し、ゾンデ放球を専門とする企業を開発機関に加えることで性能を満たす装置を完成させた。今後は、本装置の実証データを積み重ねることで、主要ユーザーへのアピールを行うとともに、大規模森林火災等災害現場への適用、焼畑農業が行われている東南アジア地域での二酸化炭素計測等、海外を含めた製品の展開を期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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