資料4

開発課題名「複雑系科学に基づく経年変化の計測と予測に関する調査研究」

機器開発タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  津田 一郎【北海道大学数学連携研究センター センター長】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  岡山大学
T.開発の概要
さまざまな構造物に使用されている材料の経年変化を正確に知り、将来の変化を予測する方法を確立することは、社会の安全性を将来にわたって保証する極めて重要な課題である。このため、複雑系科学で蓄積されてきた方法をもとに、カタストロフが起こるまでの変化の動態と臨界時間を明らかにする計測手法開発に関する調査研究を行い、カタストロフを予測できる新しい手法開発の可能性を探る。
U.事後評価における評価項目
(1)異なる材料に現れるクラックの普遍性と多様性の抽出
 複雑系数理学的手法、物性物理学および材料工学の方法、文献調査、ヒアリング
(2)経年変化パターンの特徴づけと予測
複雑系科学と逆問題の数学、資料パターンの収集、文献調査、ヒアリング

上記の手法を用い、本調査研究において構造物の経年変化が応力ひずみを生む場合は超音波計測などを使用した計測データに逆問題による定式化を適用し、劣化状態を推定することが可能であること、さらに局所的破壊が存在し、その時間発展を予測する場合は、逆問題による定式化の他に、フェイズフィールド法が有効であることを明らかにした。
また破壊やひずみなどの特異点が存在する場合は、その場所の同定と特異点の特徴を抽出するために計算ホモロジーの手法が有効である可能性を示した。加えて破壊の不安定性を局所リアプノフ指数の計算により判定可能であることを示した。
V.評 価
複雑系科学、特に複雑系数理学的手法により経年変化の計測と予測を行う方法論の探索に関し、いくつか具体的な事例について調査研究を行い、開発研究の対象として実行可能な研究計画をたてている。構造物の経年変化に関し、超音波計測に逆問題による定式化を適用し、劣化状態を推定することが可能であることや、その際にフェイズフィールド法が有効であること等を見いだしており評価できる。 異なる材料に現れるクラックの普遍性と多様性の抽出に関する調査研究項目についても更なる調査研究が行われることを期待したい。


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