チームリーダー : |
程 肇【金沢大学 理工研究域・自然システム学系 教授】 |
中核機関 : |
金沢大学 |
参画機関 : |
なし
|
- T.開発の概要
- 真核生物のmRNAのpoly(A)鎖長をゲノムワイドでハイスループット決定できるPACHINCO(Poly(A) Capture by Hairpin Chimeric Oligonucleotide)-RT-PCR法の構築を目指した調査研究を行う。本技術の開発により、全くといっていいほど未知なmRNAのpoly(A)鎖の多様な制御を調べることが初めて可能になり、新規かつ普遍的な遺伝子発現制御原理を明らかにできるものと期待される。
- U.事後評価における評価項目
- (1)RNA-DNAキメラアンカーとpoly(A)mRNA連鎖反応の最適化
- 現在市販されている4社5種のRNA ligaseにつき検討し、NEB社のT4 RNA ligase2が最適酵素であることを明確にした。また、最適逆転写酵素につき3社3種の酵素を検討し、Takara社のPrimescript Reverse transcriptaseが最適であることを明らかにした。
- (2)poly(A-T)鎖を効率的に増幅する酵素の選定とPCR反応条件および反応液組成の選定
- 現在市販されている5社6種のPCR増幅酵素につき検討し、Toyobo社のKOD Fx polymeraseが 最も高効率に(A-T)リッチな鋳型を増幅することを明らかにした。
- (3)ゲノムワイド遺伝子特異的プライマーのデザインツール作製
- 最高5bpの解析精度を有し、かつ高いスループット性を有する"島津製作所の自動電気泳動装置MULTINA"用の"poly(A)鎖長分布 自動解析プログラム"を開発し、PACHINCO-RT-PCR法のパイロット実験により解析可能であることを確認した。
- (4)げっ歯類細胞 全遺伝子のpoly(A)鎖長をPACHINCO-RT-PCR法により測定
- パイロット実験にて100遺伝子のpoly(A) RNAのpoly(A)鎖長をPACHINCO-RT-PCR法で決定し、複数の遺伝子のmRNAのpoly(A)鎖長が概日リズムの支配下にあることを明らかにした。次に、1000遺伝子のプライマーを合成して拡大版PACHINCO-RT-PCR法を実施し、約3.5%の遺伝子でいくつかの時刻位相にピークを有するmRNAのpoly(A)鎖長で概日リズムが変化することを確認した。
- V.評 価
- 不均一な分布を持つpoly(A)鎖長を、簡便に、且つゲノムワイドにハイスループットに測定可能な"PACHINCO-RT-PCR法"の構築を目的とした調査研究である。基礎反応条件の最適化を図るため 最適酵素の選定や反応液組成の検討を鋭意推進し、PACHINCO-RT-PCR法を構築することが出来た。また、"島津製作所の自動電気泳動装置MULTINA" 用の"poly(A)鎖長分布 自動解析プログラム"を開発し、げっ歯類細胞を用いたPACHINCO-RT-PCR法の実験にて解析可能であることを確認できており、調査研究としては十分な成果をあげている。一方、現時点の解析精度では、10塩基以下のpoly(A)鎖をもつmRNAを効率的に測定することができない。今後、超高速塩基配列解析装置等を用いて、1塩基の精度で"poly(A)鎖長"を測定可能な「PACHINCO-RT-PCR解析装置」の開発が行われることを期待したい。
|