資料4

開発課題名「非標識ハイスループット相互作用解析装置の開発」
機器開発タイプ(領域特定型)

【一般領域】リアルタイム・ハイスループット観察・リアルタイム制御
又はものづくり環境適応可能な計測分析システム

開発実施期間 平成19年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  民谷 栄一【大阪大学大学院 工学研究科 教授】
サブリーダー :  金子 努 【武蔵エンジニアリング(株) DS技術部 課長】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  武蔵エンジニアリング(株)
東京工業大学
田中貴金属工業(株)
(有)バイオデバイステクノロジー
T.開発の概要
医療や創薬において、多検体を網羅的かつハイスループットに解析するため、これまでにDNAチップやプロテインチップなどのバイオチップが開発されている。しかし、従来のバイオチップでは、検出・解析に長い時間を要し、蛍光分子などの特定標識剤を必要とすることから、高感度かつ非標識にて解析可能な装置が求められている。そこで本開発ではナノ材料より発現される新規特性を利用した非標識ハイスループットバイオチップおよび相互作用解析装置の開発を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)コア・シェル型ナノ粒子層基板を用いたLSPR(局在表面プラズモン共鳴)バイオチップの開発
 電気泳動堆積法により、ナノ粒子を高集積化させ、その基板でバイオチップを作製した。血液凝固因子であるフィブリノーゲンを10pg/mLの濃度で検出可能とした。このチップを並列に製造するための系を試作し、10枚/日の製造枚数を実現した。また、ポリイミドフィルムを機械加工したウエル構造を作製した基板上へ融着させ、バイオチップを作製し、1000スポット以上のウエルを有するチップを簡便に製造可能とした。ウエルに滴下した試料はチップとポリイミドフィルムの隙間を介してクロストークすることはないことを確認した。
(2)ハイスループット相互作用解析装置の開発
  移動しながら塗布を行う制御装置を組込み、50×10行を約130秒という高速で処理できた。塗布位置精度はギャップが1mmで100μm以下であり、塗布量精度は純水100nLでCV値*8%以下となった。LSPR測定速度は、積算時間50msec、平均化回数3回、移動後測定前待機時間0msecの条件で、200スポットを117秒であった。これらを含め、試料塗布から検出、解析までの一連の工程を連続処理できる自動化機構を実現した。解析については4種類のソフトウェアを開発し、ベースライン補正、スペクトルピークサーチ機能を備え、測定結果を表計算ソフト上で処理可能としている。
(3)解析対象の選択と応用ユーザーの参画
応用ユーザーとして、医師、食品関係、抗体メーカー等と連携し、ヒアリングを実施した。この結果に基づき、解析対象の一つとしてハイブリドーマ培養液を選定し、抗体スクリーニングに応用した。他にも抗体やサイトカイン類などのタンパク質マーカーについてプロテインチップ作製を行い、応用可能性を確認した。
* CV値:バルブを全開にした時、単位時間あたりにバルブを通過する流体の体積、または重量
V.評 価
独自のコア・シェル型ナノ粒子層基板を用いるLSPRチップとチップへの試料溶液の滴下、洗浄、乾燥、反射率測定から解析までを自動的に実施できる生体高分子相互作用解析装置の開発を目標としている。開発は順調に進捗し、特にLSPRバイオチップは性能が安定かつ均一で、大量生産が可能な製造方法を確立できた。測定装置についても開発目標はクリアし、様々な応用ユーザーの開拓も実施できている。今後は、特にニーズの高いユーザーと密接に連携し、本装置の実用化開発が進捗することを大いに期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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