資料4

開発課題名「脳血管内治療用"MRI+MRI 対応デバイス"システム
開発のための調査研究」

機器開発タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  滝 和郎【三重大学 医学系研究科神経感覚医学講座脳神経外科 教授】
中核機関 :  三重大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
核磁気共鳴イメージング(MRI)は、X線被爆の心配がなく、形態だけでなく機能をも画像化できる優れた手法である。このMRIを用いた脳血管治療体系を構築するための調査研究を行う。カテーテル操作を可能にする高速画像取得法、高速画像処理法、擬似透視像表示法、さらに求められるRF(Radio Frequency)コイル特性を明らかにするとともに、カテーテルやガイドワイヤーなどのMRI適合治療器具の改良目標の設定を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)MRI下でのカテーテル操作による問題点の洗い出しと開発目標の設定
 MRI下でX線透視(DSA)下と同様のシステムを構築するために、高速画像取得、高速画像処理、データ転送、擬似透視像表示などの検討を行った。具体的には、超高速撮像手法である「TrueFISPシーケンス法」を用いて、金属マーカーの高速画像を得たが、より撮像時間を短くしようとすると画像の質、解像度が低下する。これらを解決するためには、短い撮像時間でも必要な信号量が得られる素材またはMR信号の新しい発信受信システム等と、その高信号を効率良く得ることができる撮像手法の開発が必要となることが判明した。また、MRI装置下において、現在臨床で使用されているPt-Wコイルを用いた血管内治療用デバイスを撮像し、視認性、アーチファクトの評価を行った結果、関連器具全てにおいて、磁場による影響を受けず、アーチファクトを発生させない素材に改良する必要があることが判明した。樹脂製細線の視認性及びアーチファクトについて検討した結果、0.8mmの細線は確認でき、アーチファクトも認められなかったが、さらに細いマイクロガイドワイヤーおよびマイクロカテーテルが生体内の病変部に向かって移動するところをリアルタイムで追跡しながら画像化することを考えると、マーカー等を含めよりコントラストを発生させる素材、仕組みを開発する必要があることがわかった。また、マイクロカテーテル、ガイドワイヤー、白金-タングステンコイルの発熱評価を実施したが、大きな温度変化はないという結果を得た。さらに、MRI下とDSA下でのカテーテル操作性の比較を行った結果、開発すべき課題及び解決策を特定することができた。
(2)専用RFコイル、パルスシーケンス、高速画像処理と血管内治療用デバイス開発目標の設定
 MRIシステム内用の血管内治療デバイスの開発(カテーテル、ガイドワイヤー、マーカー材料・デバイス開発)、MRIの撮像手法及び受信コイルの開発(超高速撮影手法の開発、パラメータの最適化、コイルの開発)、画像処理・解析手法の開発(3次元構築処理手法及びその検出画像処理手法、リアルタイムfMRIシステム開発)に分類し、検討を行った。その結果、各開発項目とそれらの開発目標を設定することができた。
(3)開発目標の取捨選択と調査研究後の開発計画の立案
 上記の検討及び実証実験結果に基づき、X線被曝の心配のない、「MRI下における脳血管治療システム」の開発計画を個別の要素技術ごとに分けて数値目標とともに立案した。
V.評 価
カテーテルを用いた脳血管内治療が低侵襲医療として発展しつつあるが、現在のX線透視下ではなく、核磁気共鳴イメージング(MRI)下での脳血管治療体系の可能性を検討するための調査研究である。調査研究は順調に進捗し、単なる調査だけではなく、6ヶ月という短い開発期間中に実証データを出し、問題点の洗い出し及びそれらを解決するための開発目標を設定できたことは高く評価できる。一方、デバイス開発目標の設定に関し、より具体的な目標スペック等の検討が必要である。また、本デバイス完成を実現するには多くの技術開発が必要である。早期にMRI装置メーカーの協力を仰ぎ、従来の医療概念を覆す機器の開発が行われることを期待したい。


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