資料4

開発課題名「食品衛生検査用非破壊微生物活性計測システム」

プロトタイプ実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  高橋 克忠【特定非営利活動法人 けいはんな文化学術協会
微生物計測システム研究所 代表】
サブリーダー :  田中 晶善【三重大学大学院 生物資源学研究科 教授】
中核機関 :  特定非営利活動法人 けいはんな文化学術協会
参画機関 :  三重大学
(株)ダイセン電子工業
アルバック理工(株)
京都府中小企業技術センター
T.開発の概要
すでに確立している非破壊的立場の微生物活性計測法(特許第1903288号)を基本技術として、食品製造・流通業界ならびに衛生検査を行う試験研究機関などに向けた食品の微生物検査システムを開発する。食品中の微生物挙動を動的な立場で定量的に把握し、公定法(計数試験法)に欠けている微生物のダイナミックな情報を得るための「計量試験法」を確立することにより、食品の微生物汚染に対処する高度な技術として実用化することを目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)4系列温度条件・80試料の同時計測が可能なシステム開発
 当初、標題条件での同時計測を計画したが、ユーザーニーズを踏まえ、最少試料数8個、最大試料数24個とする複数の装置システムの合計4種類の基本型とすることとした。8試料対応型および24試料対応型も必要システムサイズを維持しつつ、相互の影響がない試料セルブロックを設計・製作することができた。
(2)装置サイズ縮小・電力消費量低減
 温度調節機能を恒温水循環式から空気恒温槽式へ変更し、サイズダウンを図った。中心試料槽サイズは元のプロトタイプ機が60cm×73cm×48cm であるのに対して、開発実用機(II:試料数24)で40cm×48cm×50cm、開発実用機(III:試料数8)で40cm×46cm×50cmとして小型化を達成した。また、空気恒温槽式としたことで、電力消費は100V、5A以下とすることができた、感度は現状の0.01/minから0.003/minを目標としたが、元プロトタイプ機のままで十分達成できた。ただし、今後基礎微生物学研究者等のユーザーニーズに応じて感度向上策も検討していく予定である。
(3)ユーザーニーズに応えた実用化開発
計測シグナルの数値表、装置シグナルの経時変化のグラフ、微生物の増殖曲線(食品の腐敗曲線)のいずれでも表示できるように仕様を設計し、ユーザーがその必要に応じていずれでもPCモニターで観測できるようにした特に微生物の増殖曲線(食品の腐敗曲線)は液体試料だけでなく、気液固体が共存する不均一な試料についても何ら区別なく描けるため、物理計測にあまり習熟していない食品や微生物の分野の技術者から好評をもって迎えられている。
V.評 価
食品の腐食過程を熱測定によって動的に把握することを目的としたプロトタイプ機の実用化開発である。当初、食品衛生法における公定法(病原菌の同定と計数)に代わる新しい計測法の実現を目標として掲げたが、このプロトタイプ機では菌種を同定できないため、公定法とは棲み分けて、民間の検査では目視・嗅覚に頼っていた領域での管理検査用機器に開発の方向をシフトした。開発は概ね順調に進み、目標とした装置は完成し、2台の受注に成功している。しかしながら、修正後の目標も、「公定法の代替」までには至らず、本装置普及のためには、今後、さらにユーザーニーズを踏まえた装置の改良を積み重ねる必要があり、開発チームの努力を期待したい。本開発は開発目標を達成したが、本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する[B]。


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