資料4

開発課題名「アクセス不可能部位で使用可能な腐食センシング
機器開発のための調査研究」

機器開発タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  篠原 正【(独)物質・材料研究機構 材料信頼性センター
グループリーダー】
中核機関 :  (独)物質・材料研究機構
参画機関 :  東京工業大学
青山学院大学
東北大学
(独)日本原子力研究開発機構
T.開発の概要
人のアクセスが難しい箇所での腐食センシングが行える装置開発実現に関する調査研究を実施する。放射能レベルが高く、長時間作業すると被曝の怖れがある原子力関係設備や、高温高圧で危険物を使用しているプラント、あるいは足場の敷設が難しい橋梁や高所部位の応用の可能性を探る。
U.事後評価における評価項目
(1)非破壊検査法の整理と化学プラント等への適用可能性調査
 アクセスが困難な個所の有機材料の劣化、高分子材料の初期劣化の診断と、その劣化程度の評価、Film Induced Cleavage(FIC)型応力腐食割れの微小欠陥の検出技術について調査した。有機材料については、金属等で実績のある方法、埋め込み型モニタリング、新規の手法に分けて可能性を調査し、化学反応に由来して発生する微弱な発光(ケモルミネッセンス)につきアクティブモニタリングの可能性を提示した。高分子材料については、従来の超音波診断の適用が難しく、新規の方法につき調査を行い、Zero-group-velocityラム波(群速度がゼロとなるラム波)を用いた方法の適用可能性を検討した。FIC型応力割れに関しては黄銅-アンモニア系における応力腐食割れを調査対象として文献調査および市販AEセンサでの計測を行った。高感度なAE(アコースティック・エミッション)センサが開発されるとFIC型の応力腐食割れの発生および進展挙動をさらに詳細に検討できる可能性があることを示した。
(2)原子力プラント環境におけるセンシング技術の課題調査
 腐食が関与する軽水炉の重要な経年劣化事象として抽出された、「配管減肉」と「応力腐食割れ」に関して寿命管理手法等について調査を進めた。高温高圧環境下における腐食センシング、その特性データの把握、放射線環境下での腐食センシング技術の課題調査を実施した。高温高圧水環境で、応力腐食割れ発生段階での素過程を連続センシングするための手法として、電気化学ノイズ(皮膜破壊とその修復に起因した腐食電流あるいは腐食電位の微弱な振動)が有望であることを示し、加えて放射能レベルが高い環境下での適用可能性の課題を抽出した。
(3)橋梁および鉄塔での腐食センシング技術の課題調査
 橋梁や鉄塔の部位ごとの環境モニタリングとして腐食アクティブモニタリング(AMC)センサにつき、センサ自体の腐食の可能性や長期モニタリングを行う場合の問題点につき整理した。上記のセンシング技術の共通課題として、ケーブル類を使用しない電源供給とデータ収集が行える無線ネットワークシステムの必要性に関して指摘した。
V.評 価
高温高圧で危険物を使用している化学プラント、あるいは足場の敷設が難しい橋梁や鉄塔の高所部位など、点検等での人のアクセスが難しい、いわゆるアクセス不能部位における腐食センシングに関して適用可能な方法、そのための環境・条件等につき整理する調査研究である。調査研究は順調に進捗し、外部から熱、光、衝撃などの刺激を与え、その際に生じる種々の(電気化学的、機械的、音響的、光学的、工学的)信号を捉える腐食アクティブモニタリング(AMC: Active Monitoring for Corrosion)法を提案し、多数点の測定を可能とするため、無線LANネットワークシステムを活用することを指摘した点については大いに評価したい。一方、個別のセンシングシステムに関しては整理されているが、必要な前処理の負荷や、センシングシステムの全体像、構築に伴う問題点等につき、さらに検討が必要と考えられる。今後、これらの課題と解決策を明らかにした上で、本格的な機器開発が進められることを期待したい。


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