資料4

開発課題名「フォトニック結晶を利用した分光イメージセンサーの開発」

要素技術タイプ

開発実施期間 平成19年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  大寺 康夫【東北大学大学院 工学研究科 准教授】
中核機関 :  東北大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
可視・近赤外光による分光イメージングにおいて、複数の波長の像を単一ショットで計測するのに必要な「モザイク型波長フィルター」をフォトニック結晶技術を応用して開発する。誘電体多層膜型層構造による鋭い波長選択性と、微小波長フィルター要素のモザイク配置による色分解機能の両立を特徴としている。波長間隔数nmで4〜25程度の波長像の同時取得が可能となり、将来的に実時間プロセスモニタリング、非接触医用画像機器への応用が期待できる。
U.事後評価における評価項目
(1)波長帯500〜600nm向けセンサーの作製・性能実証
 分光波長のチャンネル数が4から25のフィルターアレイを、波長切り替え間隔5nm以下で配置するようなフォトニック結晶の構造を設計し、電子線リソグラフィ技術を用いて実現するための方法として「デジタル格子変調技術」を提案した。また、透過帯域での平均反射率が5〜10%に収まるような無反射終端処理設計技術を確立した。これらをもとにフォトニック結晶型波長フィルターを試作してCCDセンサーと集積化し、分光センサーを構成した。また3×3波長の分光フィルターの試作に成功した。
(2)波長帯700〜900nm向けセンサーの作製・性能実証
チャンネル数4,9,16,25のフィルターアレイを、波長切り替え間隔5nm以下で配置するようなNb2O5/SiO2系フォトニック結晶の設計技術を確立した。デジタル格子変調技術、無反射終端処理技術も可視同様に有効であることを確認した。この帯域の分光センサーは、より微細な加工が必要な500nm帯用の設計・試作に成功したことから、容易に実現できる。
(3)波長帯1,300〜1,500nm向けセンサーの作製・性能実証
  Nb2O5/SiO2系に加え、Si/SiO2系の使用を検討し、Si/SiO2系で4〜25波長のフィルターアレイを透過損失約5%の無反射終端層で配列する設計技術を確立した。Si/SiO2系での試作を行い、波長数9、総画素数320×256の分光フィルターの試作に成功した。このフィルターを用いて可視域で透明な液体の濃度推定実験を行い、推定処理の可能性を実証した。
V.評 価
本開発の目的は、物体の画像を複数の波長について同時に得るための分光イメージセンサーを開発することである。開発は順調に進捗し、可視域から近赤外域のそれぞれの波長領域に用いるセンサーを設計し、その試作にも成功した。今後は本センサーを近赤外カメラやCMOS分光イメージセンサー等へ適用するため、光学機器メーカーと共同でプロトタイプカメラの開発や計測に用いるソフトウェアの整備を進め、本成果の実用化・社会還元に結びつくことを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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