資料4

開発課題名「局所・大局同時並行タイムラプスシステムの開発」

機器開発タイプ(領域特定型)
【一般領域】非侵襲的バイオ計測・イメージング手法による生体内
単一細胞の応答情報計測

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  峰雪 芳宣【兵庫県立大学大学院 生命理学研究科 教授】
サブリーダー :  馬野 且元【三谷商事(株)情報システム事業部 ビジュアルシステム部東京営業所 担当課長】
中核機関 :  兵庫県立大学
参画機関 :  三谷商事(株)
(株)ニコンインステック
T.開発の概要
1台の顕微鏡に、1分子イメージング用の光学系と、細胞全体を観察するための光学系を装備し、この2つの光学系を外部から1つのコンピューターで制御することで、対物レンズの交換なしに、高倍率狭視野(細胞局所)での蛍光ラベルした分子の挙動変化と、広視野で細胞全体(大局)の構造変化を同時並行して記録し、細胞の局所で起こっている分子の挙動変化と、細胞大局での状態変化の関係を記録、解析できるシステムを構築する。
U.事後評価における評価項目
(1)大局-局所同時並行タイムラプスシステムの完成
 局所から大局の切り替えに11秒、大局から局所の切り替えには16秒を要し、両方の撮影合計33秒以内で達成できた。オオムラサキツユクサのおしべの毛の細胞分裂の観察では1分間のうちに1秒/コマで30コマの細胞表層透過像と1コマの細胞中央縦断面の間透過像を1サイクルとし、繰り返して1時間連続して画像を記録できた。また、局所および大局の両方あるいは片方を蛍光画像とした例として、GFP-CLC(蛍光タンパク質)を導入したタバコBY2細胞を用い、その分裂過程の観察を実施した。1分間のうちに局所1コマ、大局1コマを取得して1サイクルとしこれを繰り返して2時間連続画像を記録できた。
(2)大局-局所同時並行タイムラプス汎用システムの完成
  GFP-CLCを導入したタバコBY2細胞を用い、その分裂過程の共焦点ライブイメージング観察を実施した。局所は細胞表層のクラスリン動態の蛍光像、大局は細胞の中央縦断面の透過像を取得し、1分間のうち、局所撮影は1秒/コマで5コマ、大局撮影は1コマ取得し、これを1サイクルとして連続2時間の画像を記録した。また、FM4-64で細胞膜を染色したコレオケーテの藻体を用いスペクトルイメージング観察を行った。局所は周縁細胞の一つの中央縦断面について透過像を、大局では藻体全体についてスペクトルイメージングシステムにより葉緑体の自家蛍光像と染色した細胞膜の蛍光像を取得した。5分間のうち、局所1コマ、大局はZ-スタック撮影(Z軸方向に焦点を変えた連続撮影法)で2μmおきに10枚画像を取得し、これを1サイクルとして2時間連続記録できた。
(3)データ解析システムの開発
録画したデータを観察する画像解析ソフトウェアに Kimogram、PAM解析、立体画像表示、の3つの解析プログラムを組み込んだ。またKimogram解析においては従来の直線による解析領域の指定に加えて、曲線によっても解析領域を指定することが可能となった。解析プログラムは大局撮影、局所撮影の両方で得た画像についても実行することが可能となった。
V.評 価
1台の顕微鏡で大局像と局所像を同時並行に時間のオーダーで観察し続けることができる装置の開発を目標としている。開発は順調に進捗し、目標値をクリアし、同時観察を行い、画像を記録できる統合システムとして完成した。本システムを用いて植物細胞生物学上の新たな知見が得られるなどの成果を挙げている。今後は、本システムの汎用性拡張のため、チームリーダーが専門とする分野以外での活用、ユーザーの確保等を図り、このユニークな装置が普及していくことを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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