資料4

開発課題名「質量分析機能を備えた気体核磁気共鳴分光装置」

機器開発タイプ(領域非特定型)

開発実施期間 平成19年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  冨宅 喜代一【神戸大学大学院 理学研究科 名誉教授】
サブリーダー :  広瀬 量一 【ジャパンスーパーセミコンダクタテクノロジ−(株)
マグネット部 技術営業担当部長】
中核機関 :  神戸大学
参画機関 :  ジャパンスーパーセミコンダクタテクノロジー(株)
大阪府立大学
T.開発の概要
本課題では、物質科学の研究に必須な方法として発展してきている核磁気共鳴(NMR)分光法を、科学史上初めて気相イオンへ拡張し、飛躍的に高い検出感度を利用して、生命科学、物質科学や環境科学等で重要な極微量物質の新規な計測・分析技術において我が国を世界的にリードできるレベルに押し上げるため、極微量気相イオンの質量分析と構造解析を同時に可能とするNMR分光装置を試作・開発する。
U.事後評価における評価項目
(1)超伝導磁石の均一度改良
 初期目標値は12T(高)〜4T(低)としていたが、製作時のクエンチで事故が発生し、1年間の修理期間を要したため、目標値を9.4T(高)〜3.1T(低)と下方修正した。均一度は優れた磁石が製作でき、磁気共鳴加速の要件を満たすイオン束の極低温冷却が可能となった。
(2)磁気共鳴加速法の検証
 浮遊電場の抑制技術を改良し、質量数100程度のイオンで120m/sまで減速でき、ほぼ目標を達成した。また、NMRセルを用いた速度選別法を開発し、反射法により速度分布幅0.4 m/s、半値全幅(0.3mK)の極低温イオン束発生を実現した。RF(Radio Frequency)コイルは超高真空中で低速イオンに適用可能な仕様とし、水を用いた溶液NMR信号の測定により、磁気共鳴加速の要件を満たすπパルス磁場を検証した。これらの各パーツはほぼ整いつつあるが、時間不足により期間中には磁気共鳴加速法の検証にまで至らなかった。
(3)プロトタイプ機の製作
溶液試料中の不揮発性成分の解析を可能とする電気スプレーイオン源を製作し、基本動作の確認を行った。また、ICR質量分析(イオンサイクトロトン共鳴型質量分析)部の開発を進め、傾斜磁場型超伝導磁石に組込み、質量分解能と検出感度等の基本性能を検証した。さらに、プロトタイプ機のイオン束発生を容易にするためにイオン冷却装置を設計・製作した。これらを組み込んだプレプロトタイプ機は超伝導磁石の修理に伴う開発の遅延により期間中に実施できなかった。
V.評 価
分子量が数十から数千程度の分子イオンを質量分析濃度で構造解析することを可能とする核磁気共鳴(NMR)装置を目指した機器の開発を目的としている。本開発の重要なパーツとなる超伝導磁石の製作に当たり事故が発生したため、磁場強度の目標値の修正、これに伴う要素技術開発に遅延が生じた。各パーツについてはほぼ目標通りに製作できたが、期間中に標準イオン気体のNMRデータを取得するプレプロトタイプ機の整備に至らなかった。したがって本開発は、当初の開発目標を達成できなかったと評価する。今後、本開発で得た知見を活用し、着実な開発を進められることを期待したい。[C]。


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