資料4

開発課題名「高次ナノ構造・酵素を利用した迅速・高感度な農薬センサの開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【応用領域】)

チームリーダー : 花岡 隆昌【(独)産業技術総合研究所 コンパクト化学 プロセスセンター ナノ空間設計チーム副センター長兼チームリーダー】
中核機関 : (独)産業技術総合研究所
参画機関 :  (独)産業技術総合研究所
(株)船井電機新応用技術研究所
T.開発の概要
 安全・安心な生活実現のため、食品や環境中の残留農薬を迅速・高感度にどこでも検出する技術が求められている。現在、残留農薬検査はガスクロマトグラフィー/質量分析法により行われているが、費用と時間を要するため、現場での検査には適していない。本開発では、ナノメートルの寸法で制御された高次ナノ構造体を酵素センサに応用することで、濃度1ppbの残留農薬を5分以内に確実に検出する革新的な小型センサを開発する。本技術は、現場でのスクリーニングを可能にし、食や環境の安全を守るキーテクノロジーとして期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)高次ナノ構造体作製技術の確立
 センサに用いるナノ構造体につき、微細管径、微細孔径、均一性、繰り返し構造の規則性を定め、いずれも目標値を達成した。
(2)酵素固定化の検討と評価
 高次ナノ構造体への酵素の固定化を実施し、吸着させるタンパク濃度が濃いほど担体への吸着量が増加し、約0.8%で吸着量が飽和することを見出し、この時点でのばらつきが少ないことを確認した。また、固定化されたアセチルコリンエステラーゼは天然酵素より酵素活性が低いが、十分にエステラーゼ活性が維持されていることがわかった。反応性のばらつきは±5%以下であることを確認した。
(3)高性能農薬検出技術の確立
 バッチ法により農薬を検出するためのプロトコルを検討し、酵素優勢条件下、インキュベーション法でピーク電流値を参照電極の応答と比較して検出する方式とした。電子伝達物質としてTCNQを用い、電解液成分量の最適化を行った。確立した方法によりカルバメート系農薬、有機りん系農薬を5分以内で検出することに成功した。
(4)検出ユニットの設計・開発
確立した手法を適用し、簡便性、価格等を考慮した上でディスペンス方式の検出部構造を決定した。加えて使い捨て型の電極をコスト面から検討し、低価格で使い捨てユニットが作製可能であることを検証した。回路等の試作を行い、検出試験を実施し、サイズ10×10×10cm以内とし、濃度10ppbの農薬を検出できることを確認した。
V.評 価
 本課題は、酵素を安定に且つその特性を十分に活かしたままで固定化可能な高次ナノ構造体を用い、極微量の農薬を迅速で確実にその場で検出できる高性能なセンサを開発することを目標としている。開発は順調に進捗しており、ほぼ全ての目標値をクリアし、検出方法の確立、電極の低価格化を含む検討が進められている。加えて実際の農薬を用いた検証実験が行われており、本開発の成果は世界的にも優位性を持つことが期待される。特に多孔体の開発と用途開発は意義が大きく、多様な展開も期待される。本課題は、日本発の基本技術として重要なものとなることも期待されることから積極的に推進すべきである[S]。


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