資料4

開発課題名「生体透過率の極めて高い小型広帯域光源の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【応用領域】)

チームリーダー : 竹田 美和【名古屋大学大学院工学研究科 教授】
中核機関 : 名古屋大学
参画機関 :  エルシード(株)
T.開発の概要
 近年、生体の内部観察や食品などの分析に、非接触、簡便で高い透過力を持つ光を用いる方法が注目されている。特に近赤外領域は、生体への透過率の高さや種々の物質に特徴的なスペクトルが得られるため重要である。本開発では、このような近赤外領域の小型高出力光源として、今までにない「分散量子ドットLED」や「LED励起蛍光体」の開発を行う。これらの光源は生体観察や食品分析への応用が広く期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)分散量子ドット光源の開発
 分散量子ドット光源については、光出力を増大させるために分散量子ドット積層構造を作製し、その後LED化、さらに光源化を進めている。具体的には、スペーサ層の具体的な膜厚や成長条件を検討した結果、スペーサ層厚さ87nm、成長温度500℃に決定した。続いて、最大積層数及び発光強度がどの程度増大するのか検討した結果、30層程度まで積層可能であること、また、単層と比べて、10層積層の場合に発光積分強度が24倍であることを検証した。
(2)ガラス蛍光体を用いた光源の開発
 ガラス蛍光体の開発では、LEDとの一体化手法の決定とガラス蛍光体の成型を主な開発項目として開発を進めた結果、シリコーン系樹脂を用いたガラス蛍光体とLEDの一体化に成功した。続いてガラス蛍光体の形状について検討を加えた結果、ガラス蛍光体の形状は光出力増大に大きな効果がないことを明らかにした。一方、側面に反射構造を設けることが光出力増大に効果的であることを見出し、3mW以上の光出力を得た。この光源の横サイズは21mm、厚さ方向のサイズは9mmであった。
(3)光源評価系の構築
 評価システムは、積分球とスペクトルを測定できる分光器並びにパワー校正用光源により構築した。測定部となる積分球と2つのマルチチャネル分光器(可視用、近赤外用)とを2分岐光ファイバを用いて接続することにより、可視〜近赤外に渡ってスペクトル測定ができる光学系とした。スペクトル測定に要した時間は5秒であり、これまでの評価系の10分程度から大幅に短縮された。測定ノイズについても、800nm〜1200nmの範囲で、ピーク強度に対して0.7%であった。また、励起LEDのスペクトル測定も可能であることを確認した。これらの結果より、本評価システム系は、励起LEDも蛍光体試料も評価可能であることを明らかにした。
V.評 価
 生体透過率の高い1μm帯の小型広帯域光源を開発しようとする試みである。目標として掲げた分散量子ドット光源及びガラス蛍光体光源の開発がいずれも順調に進展しており、広い応用範囲を有する強力な近赤外光源の開発が見込まれる。今後は、光源強度をより高める努力とともに光源の寿命や性能のバラツキ(再現性)など実用化に向けた検討を行うなど、開発を着実に推進すべきである[A]。


前のページに戻る