資料4

開発課題名「次世代IMS用同軸円筒イオン化チェンバの開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 松谷 貴臣【近畿大学理工学部 講師】
中核機関 : 近畿大学
参画機関 :  (株)エックスレイ プレシジョン
T.開発の概要
 悪臭計測やテロ対策、カビ・センサなどへの応用が期待されているイオンモビリティ分析装置(IMS)の検出限界を、現在市販されているものよりも103倍向上させることを目的として、パルス軟X線励起による光イオン化と光電子カスケード現象を併用した高出力イオン化チェンバの開発を行う。これにより、食品中のカビの検出、環境汚染の臭いの検出のみならず、防疫、テロ対策などへの波及効果が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)同軸円筒型イオン化チェンバの設計・試作
 同軸円筒型イオン化チェンバを試作し、軟X線と高周波電源を組み合わせることで、放射性同位体を用いる従来のイオン源と比較し、約60倍のイオンビーム電流値を達成した。目標値の100倍には満たなかったが、今後、高周波電源の高出力化および最適化を行い、改良する。また、イオン化部の形状変更に合わせたX線ターゲットや平行ビーム照射法を開発している。
(2)パルス軟X線管の電子銃の最適設計のためのCADシミュレーション技術の確立
 CADシミュレーションソフトを用いて最適設計を行うため、冷陰極材料の調査を行い、カーボンナノチューブに代わって劣化を回避できる材料として、ZnOと12CaO7AlOを見出した。
(3)パルス高電圧発生方式の基本回路の検討と設計及び試作
 基本性能として6kV、パルス幅500ns、0.1A以上200ppsのパルス高電圧電源の試作に成功した。
(4)その他
 X線ターゲットの長寿命化を狙って新たなターゲットとしてTi、TiN、TiN/Cuターゲットを開発した。200時間の電子線照射の前後で窒化物では劣化が進んでいないことがわかった。
V.評 価
 本課題は、放射性同位体を使用しないIMS向けイオン源の開発を目的としている。イオン源の開発として、軟X線による試料のイオン化、光電子カスケードによるイオン増幅、イオン化室へ薄層化した軟X線の導入、軟X線源のターゲット開発等、多様な要素技術を検討したことは評価できる。しかし、開発の方向性として発散する傾向が見られ、最終的な成果への道筋が不透明である。今後は、各要素技術のうち有望なものに的を絞り、統合してより効率的なイオン化源として利用できるように開発計画を整理・見直すことによって、効果的かつ効率的に開発を推進するべきである[B]。


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