資料4

開発課題名「低酸素癌組織イメージング用発光プローブの開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 飛田 成史【群馬大学大学院工学研究科 教授】
中核機関 : 群馬大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 イリジウム錯体のりん光は酸素によって消光される。この性質を利用して、癌などの低酸素生体組織を非侵襲的かつ高感度に可視化するイメージング技術を開発する。本開発では、発光イメージング実験によりプローブ分子の細胞・組織内動態を解明し、その結果をフィードバックして癌組織光イメージングに資する最適発光プローブを開発する。これにより、全く新しい癌診断法の確立が期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)近赤外発光プローブの確立
 BTPHSAを用いて担癌マウスの腫瘍を選択的に発光イメージングすることに成功した。また、BTPHSAを用いることで近赤外域での励起・発光が可能となった、体表から6〜7mmの深部にある腫瘍を検出することを可能とした。
(2)高輝度発光プローブの確立
 BTPに光捕集団としてクマリン343を結合したBTP-C343を開発することにより、BTPに比べて輝度を約6倍向上させることに成功した。現状では吸収・発光波長が短波長であるために深部の組織の検出が難しいため、今後は吸収・発光波長がより長波長の高輝度イリジウム錯体の開発を進めていく。
(3)in vivo 酸素分圧計測法の確立
オプティカルファイバーで励起光とモニター光をガイドした時間相関単一光子計数法に基づく発光寿命測定装置を開発し、数mmHg〜100mmHgの酸素分圧を定量可能とした。今後は酸素分圧の定量精度を向上させるため、生体投与したプローブの動態を明らかにし、りん光減衰曲線の解析法につきさらに検討する。
V.評 価
 産学共同シーズイノベーション化事業(顕在化ステージ)において開発されたイリジウム錯体を用い、癌などの低酸素組織をりん光寿命測定で判別するためのプローブの開発を目的としている。開発は順調に進められ、設定されたマイルストーンも全てクリアしている。本課題においては、低酸素の生体組織としてがん細胞を取り上げ、そのイメージングに成功しているが、組織が低酸素状態になるものは医学・生理学分野において様々な場面で現れる現象であり、この試薬の開発が成功することで、より応用分野が広がることが期待される。今後は、がん組織イメージングを成功させた上で、他分野への応用も視野に入れて着実に開発を推進するべきである[A]。


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