資料4

開発課題名「高効率・高品位タンパク質結晶生成システムの開発」

(平成21年度採択:機器開発プログラム(領域非特定型))

チームリーダー : 和田 仁【(独)物質・材料研究機構 超伝導材料研究センター特別研究員】
中核機関 : (独)物質・材料研究機構
参画機関 :  (株)清原光学
東京大学
味の素(株)
京都大学
T.開発の概要
 タンパク質機能を構造学的に解明できれば、ゲノム創薬、健康・機能性食品、低環境負荷型工業など広範な産業分野においてタンパク質利用の発展が期待できる。しかし、精密構造の決定に必須な高品位タンパク質結晶の作製に多大な時間と労力を要しているのが現状である。本開発では、磁気浮揚を利用した高品位結晶生成系にin-situ 観察系を搭載した高効率高品位タンパク質結晶生成システムを実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)タンパク質結晶の高品位化技術(高磁気力場発生用超伝導マグネットの設計・試作)
 約1,400 T2/mの磁気力を試料空間軸上20 mmに渡って発生し、直径40 mm×高さ約17 mmの試料空間において磁気力均一度が±5%である超伝導マグネットを作製した。これにより、対向コイル方式で大きな磁気力場を安定的に発生できることを確認し、光学系を導入できる大型の本機超伝導マグネットの設計・試作を開始できた。また、光学系で使用する部材・部品の磁場中動作を確認した。
(2)タンパク質結晶生成過程の可視化技術
 強い磁場内で動作可能であり、スタックされた結晶化プレートの任意位置をその場観察できる3軸制御の顕微鏡を作製するとともに、広視野かつ長作動距離で結晶化プレートのプラスチック厚さ1mm〜2mmに対応する結像レンズを開発し、10μm以下(Y軸:5μm、θ軸:8μm、Z軸:2μm)の2点分解能及び350μm x 500μm以上の視野を実現した。また、光源の最適コヒーレンスを求める試験装置を作製し、照明方法の検討を開始した。
(3)多検体用結晶化プレートの設計・開発
 磁気力場中での結晶化に使用するプレート素材を検討し、選定した。この素材で作製した結晶化プレートを使用して、(1)で作製した超伝導マグネットの磁気力場中で結晶化を行い、問題なく結晶が生成することを確認した。本機における磁場系及び光学観察系とのマッチングを考慮したプレートコンセプトを決定した。また、蒸気拡散法を利用する磁気力場中結晶化プレートを複数デザインした。結晶生成法に関しては、当初計画したシッティングドロップ法だけでなく、ハンギングドロップ法についても検討した。
V.評 価
 磁気浮揚用超伝導マグネット及びタンパク質結晶過程を観察するための光学系の開発、並びに結晶作成用プレートの開発を通して、高効率・高品位タンパク質結晶生成システムの構築を目指している。開発は順調に進行しており、各開発項目における中間目標は達成されている。また、結晶化が難しいタンパク質を含めた結晶化実験を着実に実行しており、磁気浮上法の有用性が実証されつつある。今後は、種々のタンパク質の結晶化を通して本システムの有用性をアピールすることも念頭に置き、開発を着実に推進すべきである [A]。


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