資料4

開発課題名「誘電スペクトロサイトメーターの開発」

(平成21年度採択:機器開発プログラム(領域非特定型))

チームリーダー : 大森 真二【ソニー(株)先端マテリアル研究所 ライフサイエンス研究部 統括課長】
中核機関 : ソニー(株)
参画機関 :  東京医科歯科大学
T.開発の概要
 標的細胞をラベルフリーで分析・分取できる装置は国内外に現存しない。本開発は、マイクロ流路中を高速で流れる細胞の誘電スペクトルを瞬時に分析して標的細胞のみを採取する誘電スペクトロサイトメーターの実現を目指す。これにより標的細胞を染色せずに生きたまま分取する単一細胞分析技術の装置化が可能となり、血液学をはじめ、将来的に再生医学の先端研究分野などに大きく寄与することが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)電極埋込型マイクロ流路素子の試作・評価
 細胞検出部の加工寸法標準偏差において、数値目標である10%より小さい値を達成した。また、細胞分取方式に誘電泳動法を採用し、当初計画より半年早く動作原理を実証した。
(2)多周波誘電アナライザーの設計・試作・評価
 測定周波数範囲、周波数点数、キャパシタンス分解能、コンダクタンス分解能、サンプリング速度 全てにおいて、数値目標を達成する誘電アナライザーを試作した。業界標準と考えられているプレシジョン・インピーダンス・アナライザの1/30の測定時間であった。
(3)試作装置の完成
 各要素技術と解析ソフトウェアで構成される試作装置を作製し、単一細胞の誘電分散測定に世界で始めて成功した。
(4)医学評価の準備
 患者検体を用いた装置評価(医学評価)として 4種の実験系を確立し、協力医療施設での倫理承認を得た。一部計画について検討を開始し、試料調製法や実験方法を確立した。
V.評 価
 検出部を通過する細胞懸濁液に微弱な交流電圧を印加することで、無標識の生きたままの標的細胞を1細胞ずつ分析・分取できるフローサイトメトリー(誘電スペクトロサイトメトリー)装置の開発である。  本装置の3つの要素技術のうちの2つである「電極埋込型マイクロ流路素子」と「多周波誘電アナライザー」に関し全ての数値目標を達成し、その要素技術を使った試作装置により 単一細胞の誘電分散測定に世界で始めて成功した。また、当初計画より半年早く第三の要素技術である細胞分取技術開発を検討し、誘電泳動法による細胞操作を実証した。  今後は、実際の患者検体を使った医学評価を行い、 標準的な血球計数装置などと比較検証することで 測定誤差や応用可能範囲を明確にし、測定感度を更に向上した装置開発を積極的に推進すべきである[S]。


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