チームリーダー : | Penmetcha K.R. Kumar【(独)産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 主任研究員】 |
中核機関 : | (独)産業技術総合研究所 |
参画機関 : | (株)デザインテック 京都大学 |
- T.開発の概要
- DVD基板表面にRNAあるいは機能性分子を吸着させた光ディスク(Bio-DVD)の開発と、結合する分子を光学的に高速・高感度で解析する評価システムの開発を行う。本開発では、Bio-DVD基板表面上で化学結合反応させた測定試料にレーザー光を照射し、Bio-DVDの多層薄膜構造からの干渉光変化をDVD記録再生用ヘッドで検知する。すなわち、化学結合の有無を反射率変化として高感度で検知するため、蛍光化合物などによるラベル化が不要な高機能バイオセンサを実現し、医療、食品、環境分野での応用が期待される。
- U.中間評価における評価項目
- (1)Bio-DVD用アプタマー作製
- アプタマーなどプローブとなる生体分子として、8種類のアプタマー及び3種類のタンパク質を作製した。これらのプローブ分子はディスク基板上に吸着させることができ、さらに各標的分子と結合することが判明した。以上より、作製したアプタマーなどの生体分子は、Bio-DVD実験に利用できる有望なプローブとなることを確認した。また、アプタマーの標的分子に対するKd値は6nM-500nMと良好な感度を有した。アプタマーは標的分子と濃度依存的結合し、定量分析の可能性が示唆された。相互作用解析は Biacore装置とNMR装置(アプタマー単体は重原子のrmsd値0.48Åで構造決定)で行い、アプタマーの性能を確認した。
- (2)Bio-DVDメディア作製
- 新型ディスク構造を開発し、検出感度が目標値を超える成果を得た。チオール基を介してdT20からなる一本鎖DNAを固定したものと、B型インフルエンザのノイラミニラーゼとの抗原抗体反応の検出において光学的感度を比較したところ、従来ディスクに比べて新構造のBio-DVDでは2.5倍程度の感度向上を確認できた。
- (3)Bio−DVD評価システムの製作
- アドレス情報管理として相変化膜にアドレス情報を記録する方式を採用した結果、1mm幅でアドレス情報を記録し、その直後にサンプルスポット位置を割り付けたことに成功した。直径80mmディスクにおいて、1周当たり19サンプルスポット、ディスク全エリアで6周分の合計114か所のサンプルスポット位置を記録し、各スポット位置の識別が出来ることを確認した。
- V.評 価
- RNAや機能性分子を表面に吸着した光ディスクと、これを既存のDVD装置の機構を利用して高速かつ高感度に判別できる機器の開発を目的としている。開発は順調に進捗しており、実効性の高い要素部材の設計から部材開発、評価、ソフトウェア開発までが連携良く進んでいる。本バイオセンサシステムは、インフルエンザの診断、予防対策への応用やプリオン病研究開発の手助けになると期待できる。今後は、実サンプルを用いた基礎データの積み上げにも努力しながら、着実に開発を推進すべきである[A]。