資料4

開発課題名「実時間型エアロゾル多成分複合分析計の開発」

(平成20年度採択:機器開発プログラム【一般領域】地球環境問題に関わる環境物質のオンライン多元計測・分析システム)

チームリーダー :  竹川 暢之【東京大学 先端科学技術研究センター 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  富士電機システムズ(株)
(独)海洋研究開発機構
T.開発の概要
 大気エアロゾルは気候変動や大気汚染に重大な影響を与える。これらの環境問題の解明に本質的に重要なパラメータ(粒径別化学組成、混合状態、光学特性など)を多角的・定量的に高速分析するために、レーザー・真空技術を駆使した複合分析計を開発する。本技術はクリーンルーム・半導体製造環境の粒子分析などにも応用可能であると期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)真空濃縮・粒子ビーム生成部の開発
 PM2.5仕様として実用化するためには粒径1μm近傍における透過率が60〜80%と若干不足しているが、ノズル初段プレートへの粒子の付着が原因と特定して、これを解消する流路設計の改善方針も明確であり、全体計画へは遅滞なく解決可能とみられる。
(2)レーザー散乱・蛍光/白熱光検出部の基礎開発
 レーザー光学系および検出器を簡略化したモデルを設計・試作し、実証に基づく真空モデルの仕様を決定した。蛍光検出部において粒径0.5μm以上の単一粒子に対して有機物の種類に対応した蛍光を世界で初めて検出した。また、白熱光検出部における粒径検出下限については、散乱光で0.12μm、白熱光で0.14μmを達成し、目標値を大きくクリアした。加えて当初計画にはなかったが、偏光分離チャンネルを加えて、単一粒子レベルで粒子形状を計測する独自技術を開発した。
(3)加熱−質量分析による濃度定量部の基礎開発
 当初計画にはなかった微細加工(MEMS)技術を応用した独自設計の粒子トラップを新たに開発することで、実験粒径0.45μmにおいて捕集効率ほぼ100%を達成した。また、生成するイオンの検出効率についても目標を上回る値を得た。
(4)要素技術を統合したプロトタイプ機の設計
 新規開発した要素技術を含め、複合化のコンセプトを決定した。新たにタンデム型ノズル方式を発案し、装置の小型化に見通しを立てた、また複合分析計の統合制御アルゴリズムの開発にも来年度中の完成を目指して着手している。
V.評 価
 環境モニタリングにおいて重要なエアロゾルの総合的な複合定量分析装置を目指した開発である。本装置において新たに開発された偏光分離チャンネル、MEMS粒子トラップ、タンデム型ノズルといった要素技術については、独自の流路設計や要素技術開発を成功させて、ほぼ全項目について目標値を上回って数値目標を達成しており、装置完成に向けた進展が期待できる 今後は各要素技術の統合性が課題となるが、本装置の環境分野以外への普及をも目指して、競合製品の開発の進展に留意しつつ、知的財産権の確保を行い、システムとしての本装置の特徴が活きる分野に向けて、総合性能の向上を目指し、開発を具体的、着実に推進すべきである[A]。


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