資料4

開発課題名「膜に関連するタンパク質の配列・構造粗視化解析技術」

開発実施期間 平成18年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  美宅 成樹【名古屋大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)
T.開発の概要
 アミノ酸配列から膜関連タンパク質の予測・分類を行うためのソフトウェアシステム、および膜タンパク質の分子間相互作用の情報を与えるフォースカーブ解析手法を開発する。これはゲノム規模の膜タンパク質高精度予測システムの要素技術となる。本技術要素のポイントは、原子分解能の見方が最も良いという常識を覆し、配列や構造を粗視化することで膜タンパク質の構造形成や分子認識の本質をとらえるという新しい見方にある。
U.事後評価における評価項目
(1)膜タンパク質の予測法の高度化
 シグナルペプチド付き分泌型タンパク質を多く含む難しいデータセットに対する膜タンパク質と水溶性タンパク質の判別、 並びに、膜貫通領域トポロジー予測において、ともに、正しく予測されたデータの割合、及び、予測されたものの中での正解率の両方とも目標を達成した。
(2)膜タンパク質の予測・分類
 受容体タンパク質予測、並びに、Gタンパク質のファミリー分類を実施し、高精度に予測・判別可能であることを示した。β型膜タンパク質予測の問題を、グラム陰性菌で生合成されるタンパク質の、細胞質、内膜、ペリプラスム、外膜、細胞外という5つのコンパートメントへの局在予測の問題に置き換えて実施したところ、高精度予測ができ目標を達成した。
(3)フォースカーブ測定と粗視化シミュレーション
 タンパク質の超分子重合の様子やフォースカーブなどのタンパク質大変形の様子と相互作用の変化をシミュレーションするシステムを開発し、実際の引き抜き実験結果とよく合う結果を得た。
V.評価
DNAシーケンサーにより読み取られた塩基配列の解読を支援する膜タンパク質予測ソフトウェアを開発した。
この手法はアミノ酸配列の文字列を物性分布に変換して粗視化・統計解析し分類する点に独自性があり、インターネット上に公開した膜蛋白質予測システムはユーザー数から見て国際的に非常に高い評価を受けている。加えてチーム自体もユーザーの立場で本システムを活用してゲノムデータベースから極めて興味深い生物学的知見を抽出することに成功し、本システムの有用性を示した。今後は、開発したソフトウェアの普及、精度向上等に努めることが期待される。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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