資料4

開発課題名「X線円形多層膜ラウエレンズの開発」

開発実施期間 平成18年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  篭島 靖【兵庫県立大学 大学院物質理学研究科 教授】
中核機関 :  兵庫県立大学
参画機関 :  NTT−ATナノファブリケーション(株)
T.開発の概要
 超精密成膜技術を用いて、高空間分解能かつ高回折効率のX線円形多層膜ラウエレンズを開発する。従来の電子ビームリソグラフィー法に基づくX線レンズの製作技術は、ほぼ限界に達しており、ナノメータースケールの非破壊構造観察を実現するには、新しい製作法の導入が不可欠である。本研究では、超薄成膜技術を用い10nm以下の空間分解能を有するX線円形多層膜ラウエレンズを開発し、究極の電磁波であるX線自由電子レーザーがもたらすX線画像科学における質的変革の一翼を担うことを目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)1次元集光で空間分解能10nm以下、回折効率50%以上
 1次元多層膜レンズの成膜、切断、薄片化・平滑化技術を確立し、多層膜構造素子の作製技術を開発した。 得られた1次元多層膜素子の空間分解能は13nmであり世界最高値を達成した。しかし、傾斜角がブラッグ角を満たさず、薄片化の歩留まりが低く、目標値10nmには達しなかった。回折効率は、65%の高い効率に達し、当初の目標を達成した。
(2)2次元集光で空間分解能20nm以下、回折効率40%以上
 X線円形多層膜ラウエレンズの本質である、多層膜径を傾斜させた芯線上傾斜多層膜構造の作製技術を開発し、傾斜角度、真円度±0.1%以内を達成し、空間分解能は26nmと世界最高値を達成した。しかし、界面粗さが大きく、薄片化時の歩留まりは低く、空間分解能は目標値20nmには達しなかったが、回折効率は52%を達成し、世界初・世界最高値を得た。
(3)光学素子の性能評価技術の開発
 2nm〜 10nmの範囲の極小線幅を有する1次元多層膜テストチャートを作成し、静電変位プローブとフィードバック型ピエゾステージの導入等により、高精度な空間分解能測定を可能とし、±2.0nmの測定精度を達成した。また、最小線幅5nmの1次元多層膜テストチャートを組み合わせて2次元テストチャートを作成した。2次元テストチャートでの測定精度は±2.0nmと、当初目標を達成した。
V.評価
X線円形多層膜ラウエレンズの開発に当たり、1次元集光、次いで2次元円形集光レンズと段階を踏み、多層膜ラウエレンズ製作に必要な精密成膜技術を開発した。多層膜レンズの製作では、成膜段階での傾斜角や界面粗さが不十分であったため、実際に得られた空間分解能は僅かながら目標値には達しなかったものの、世界最高の分解能を達成した。特に回折効率については、1次元・2次元集光系に対し世界最高の性能を得ており、X線集光レンズに関して、実用上、極めて重要な進展が得られたものと高く評価できる。今後は、世界ナンバーワンである本要素技術をさらに磨き上げ、高効率のX線集光素子の生産に向けた技術開発が可能となるよう、さらなる発展を期待したい。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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