チームリーダー : | 伊東 修一 【オリンパス(株) 未来創造研究所 研究コーディネーター】 |
中核機関 : | オリンパス(株) |
参画機関 : | 金沢大学 京都大学 北陸先端科学技術大学院大学 名古屋工業大学 |
- T.開発の概要
- 生体高分子(タンパク質やDNA等)の動的構造情報を得ることは、その機能解明を行うために重要である。そのための生体分子3次元高分解能動態解析装置(高速原子間力顕微鏡)を開発する。従来の原子間力顕微鏡は1画像を得るのに分オーダーの時間を要し、動的挙動観察は不可能であった。本装置は、水溶液中の生体分子をナノメーターの解像度で動的観察可能である。描画速度40フレーム/秒、垂直分解能0.1nm、試料に与える力2pN以下という性能である。
- U.事後評価における評価項目
- (1)装置の測定条件
- 液体中において、試料に加わる力2pN以下(生体分子同士の相互作用を阻害しないこと)、最大走査範囲をxy方向2μm、z方向1μmという目標とした。液体中での測定は可能であるが、特定分子について実用上の問題はないものの、試料に加わる力については、5〜30pNとなった。また、最大走査範囲はxy方向2μm、z方向0.4μmであったが、生体分子の観察に支障はない。
- (2)装置の性能
- @ AFM測定モード
DCモード(コンタクトモード)、ACモードの測定を可能とした。 - A 描画性能
マイカに固定したDNAの動態を40フレーム/秒で観察できた。垂直分解能は0.1〜0.5nm程度、水平分解能は1nmとなり、目標を達成した。 - B 高速カンチレバー性能
共振周波数とばね定数が異なる3タイプのカンチレバーを製作し、このうちの一つが実用的なものとしてほぼ完成した。このカンチレバーの共振周波数は0.8MHz(水中)、ばね定数は50pN/nmであり、目標を達成した。他の2種類についてはさらに調整が必要である。
- V.評価
- 水溶液中で動く生体分子を、その機能を損なうことなく、高い空間分解能でリアルタイムに直接観察できるという本装置の開発目標につき、目標値のほとんどを実用的に支障がない範囲で達成した。開発を進めるに当たり、AFMのメーカーである中核機関の強いリーダーシップのもと、装置のユーザーが加わるという開発体制を活かして、ユーザーニーズを踏まえたプロトタイプ機が完成した。今後は本装置を活用する応用分野を見据え、その広がりの一助となるような要素技術の開発、例えば試料調製方法の簡易化等も進めつつ、製品化に向けた開発の継続を期待したい。
- 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。