資料4

開発課題名「高度ものづくり支援―超高温熱物性計測システムの開発」

開発実施期間 平成19年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  福山 博之【東北大学 多元物質科学研究所 教授】
中核機関 :  東北大学
多元物質科学研究所
参画機関 :  アルバック理工(株)
慶應義塾大学
首都大学東京
学習院大学
東北大学(工)
T.開発の概要
 半導体の結晶構造や超耐熱合金の精密鋳造あるいは精密溶接など高温融体が関連する高付加価値製造プロセスにとって数値シミュレーションは必要不可欠なツールであり、その基盤を支える融体の熱物性値データベースの充実が求められている。本開発では、電磁浮遊法に静磁場を重畳することによって液滴の振動と表面の対流を抑制し、高温融体の熱伝導率、比熱、放射率、密度、表面張力を高精度に測定するシステムを開発することを目的とする。
U.事後評価における評価項目
(1)高温融体の熱物性を同時に測定する
 溶融シリコンについて、次の熱物性を目標の精度で同時に測定可能とした。(不確かさは測定値の標準偏差を採用している)

熱伝導率:±2.6%     表面張力:±1.6%
半球全反射率:±3.8%   比熱:±2.9%
密度:±1.0%
(2)熱物性計測システムの開発
 超伝導マグネットについては、鉄系の熱伝導率を測定するために、最大磁場を6Tから10Tに仕様をあげ、アクティブシールドタイプを採用し、磁場の影響を受けることなく、操作性及び測定精度が向上した。放射温度計を単色化することで、測定温度の精度向上と応答時間の短縮を図り、測定範囲450〜2500℃(精度0.025%〜0.08%)において、応答時間1.5msを達成した。さらに高速カメラではフレームレート2000フレーム/秒と初期目標より約1桁速い撮像が可能となった。
(3)シミュレーションコードの開発と実施
 電磁浮遊液滴内対流、特に電磁流体力学的(MHD)対流の本質を明らかにするために、直接数値シミュレーション(DNS)コードを開発し、熱伝導率の測定値に及ぼす静磁場強度の影響を検討するための数値シミュレーションアルゴリズムを開発した。この数値シミュレーション結果は溶融SiあるいはFeの真の熱伝導率を測定するための静磁場強度の最適条件を提案することができた。また、静磁場強度の増加とともに電磁浮遊液滴内対流は乱流から層流へ遷移すること、静磁場を印加したときの液滴内平均速度の最大値と静磁場強度との関係を明らかにすることができた。
V.評価
超高温熱物性計測システムの開発は順調に達成され、多種の熱物性値(熱伝導率、表面張力、半球全反射率、比熱、密度)を同時に測定することを可能にした。更に測定値は、従来ある報告値の標準偏差を10分の1とする目標が達成された。本装置は先端金属材料を開発している企業の依頼測定に迅速に対応可能なオンリーワンの装置として有効活用される予定であることも高く評価できる。今後は搭載ソフトウェアのユーザビリティ向上、測定精度を更に向上させ、熱物性測定の標準装置を目指すことを期待したい。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


前のページに戻る