チームリーダー : | 房安 貴弘【長崎総合科学大学 情報学部 准教授】 |
中核機関 : | 長崎総合科学大学 |
参画機関 : | (独)国立文化財機構 東京文化財研究所 サイエナジー(株) 東京大学大学院理学系研究科原子核科学研究センター |
- T.開発の概要
- 現在、硬X線やガンマ線によるイメージングは、検出器の反応効率の低さから線源の大型化・強度化が避けられないが、GEM(Gas Electron Multiplier)の発明により、高感度かつコンパクトなイメージング測定が可能となってきた。本開発では、GEMを用いた超高感度ガンマ線センサーと高密度実装システムLSIとを組み合わせることにより、大面積かつ高精度なイメージングを実現する。ポータブルな非破壊検査装置や陽電子断層撮影装置(PET)などの検出器としての可能性が期待できる。
- U.中間評価における評価項目
- (1)電荷・時間同時計測LSIの初期試作
- 2次元検出器の製作については、初期試作として、最小面積(5mm四方)のチップを試作し、AD変換器の分解能(約8bit)については目標値を達成した。同じ製作プロセスによってチップ面積を4倍にすることは可能であり、10mm四方、32ch/chipまでは製作可能と考えられる。
- (2)検出器のシミュレーション
- GEMの電子雪崩が支配的な領域1MeV以下のガンマ線では、十分に小さな位置分解能は示したが、光電子変換効率は極めて低いという問題点がある。今後、ガンマ線2D検出器として発展させるには、ターゲットとするガンマ線エネルギー領域を、開発ニーズの高い数100KeV領域に絞り開発計画を練り直す必要がある。このため、光電変換効率のより高い光電コンバータ方式を採用し、光電子変換効率10%、検出器寸法200mm四方を目指し、開発計画を再構築することとした。
- (3)検出器の試作
- 50mm四方の2次元検出器を試作し、硬X線―電子コンバータとGEM、および既存のCMOSセンサーを組み合わせ、X線像の撮影を実現し、実証実験に成功している。
- V.評価
- GEMの採用により、本技術が完成すれば、大面積かつ高精度のイメージング機能を有するポータブルな非破壊検査装置、PETなどの医療機器等の実現が期待される。今後、500KeV領域で高い変換効率が期待できる光電コンバータを採用するなど、開発計画を再構築することによって、当初掲げた目標は達成可能と考えられる。今後は参画機関サイエナジー(株)および東京大学理学系研究科との連携をさらに強め、開発を着実に推進すべきである[A]。