チームリーダー : |
鈴木 拓【(独)物質・材料研究機構 量子ビームセンター 主幹研究員】
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中核機関 : |
(独)物質・材料研究機構 |
参画機関 : |
(なし) |
- T.開発の概要
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表面・界面の磁気構造の分析は、スピントロニクス開発などで強く要請されている。しかし既存の分析法では表面敏感性や元素識別性の欠如により、この分析は困難であったが、この分析を可能にする新手法として、偏極4He+ビームを用いるイオン散乱分光法(SP−ISS)を開発した。本開発では、SP−ISSの要素技術である「偏極4He+イオン源」を開発してビームの高偏極化と大電流化とを同時に達成することで、SP−ISSの実用化に必要な測定感度を実現する。
- U.中間評価における評価項目
- (1)液体窒素冷却環境下における安定したRF放電の達成
- 液体窒素冷却によって、当初目標としていた80Kの環境下で安定放電を達成し、さらに液体ヘリウムを冷媒に用いることで、20Kでの安定放電を達成した。RF放電出力については冷却環境で、3Wの安定放電を達成した。
- (2)ビームラインと分析系の構築
- 静電レンズとディフレクターから構成されるビームラインを構築し、エネルギー2keVのイオンビーム発生に成功した。さらにビームライン全体を電気的にフローティングし、試料直前に減速器を設置することにより空間電荷効果によるビーム発散を最小限に抑制して、50eV以下という超低速ビームの発生に成功した。動作時の真空度は、当初目標としていた10−7Torrを上回る10−9Torr台を達成した。2次イオンのカウントレートについては、新たに作製した角度分解静電エネルギーアナライザと、既存イオン源との組合せによりISSスペクトル測定に成功し、150cps以上のカウントレートを得た。
- V.評価
- イオン散乱分光法により表面スピン(磁性)を計測する新手法の開発である。
偏極イオンビームを作成し、表面磁気ヒステリシスを観測し、原理検証を終えたことは評価できる。レーザーでHeSを励起し、ペニングイオン化して偏極Heイオンを作るに際していかに高密度なイオンビームを作れるかが成否を決める鍵となる。中間評価時点では予定通りの数値目標を達成している。今後は実用的な分析法になり得るか否かが問われるが、磁性材料の評価法は多数提案されており、競争は厳しいものが予想される。今後、開発を着実に推進すべきである。
[A]
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