資料4

開発課題名「軟X線多層膜鏡の1Å精度波面補正技術の開発」

(平成20年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 津留 俊英【東北大学 多元物質科学研究所 助教】
中核機関 : 東北大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 軟X線を光源とする生体顕微鏡では、軟X線の機能性から生きた細胞の内部を高分解能で元素コントラスト観察できる。しかし、現状では、結像鏡用の超研磨基盤の形状精度限界1nmが結像性能を大幅に劣化させている。本開発では、軟X線の強め合いの干渉を利用した多層膜鏡で満たすべき形状誤差0.1nmを、独自に考案した多層膜表面デジタルミリング除去法で物理光学的に反射波面を補正する方法を開発し、軟X線用の回折限界結像鏡を実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)ミリング波面補正原理評価
 軟X線多層膜反射鏡のミリング反射特性を評価できるシミュレーションソフトウエアを開発した。シミュレーターにより任意に設定したミリング膜厚で位相・反射率が計算可能である。また、可視光による波面補正原理を検証するため、可視光用多層膜反射鏡をイオンミリング波面補正装置で局所イオンミリングし、反射波面の変化を位相シフト型干渉計で測定した。多層膜ミリング部は予測通り多層膜をミリング除去したにも係わらず波面が進んだことから、波面補正原理を実証できた。
(2)平面多層膜鏡ミリング波面補正技術の確立
 イオンビーム強度分布のリアルタイム計測用に開発した電極列を用い、計測誤差と再現性を含め、φ100nm平面基板全面でイオンビーム強度を均一化できた。また、単層膜のミリング前後の深さ分布を小角X線回折で±0.5nmの精度で計測し±1.7%以内で均一化を実現した。多層膜ミリングで、ミリング後に可視光の分光反射率の違いにより縞模様が生じることを見出し、軟X線多層膜鏡の波面補正に必要な±2nmの精度でミリング膜厚を決定できることを示した。
V.評価
 ECRイオン源のミリング法を大口径化し、軟X線領域の多層膜精密反射鏡の開発を目指している。開発は順調に進められており、±0.5nmの精度でミリングを達成している。その他の達成目標も全てクリアしている。目標達成に当たり、新しい計測方法を独自に開発するなど、特筆すべき進展が見られる。今後は本技術の実用化・製品化に向け、メーカーの参画、ユーザーニーズの把握に努めるなど、開発を積極的に推進すべきである[S]。


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