資料4

開発課題名「分子キラリティー顕微鏡の開発」

(平成20年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 河合 壯【奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 教授】
中核機関 : 奈良先端科学技術大学院大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 局所領域の分子のキラリティーを検出、画像化する、顕微蛍光計測技術を提供する。蛍光顕微鏡の特性を生かして細胞や生組織など光学的に不均質な試料についても高感度に分子のキラリティーを検出、可視化することでタンパク質分子の in vivo 構造解析など基礎理化学研究に画期的な計測手段を提供する。さらには、診断、検査などの応用計測技術への展開を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)円偏光顕微鏡の開発と高性能化
 高感度化と高精度化を課題として、円偏光顕微鏡のプロトタイプを構築した。ビームエキスパンダと20倍あるいは40倍の対物レンズを利用した光学系とすることで、高感度化に成功した。紫外光レーザー(375nm)を励起レーザーとして使用することで400〜700nmの波長領域に対応が可能となった。光学系の整備に加えてソフトウェアを整備することで2μmの空間分解能を達成した。また、光学系の調整プロトコルを新たに開発することで円偏光非対称性感度(ΔgCPL)を2×10−4以下とすることに成功した。ロックインアンプからPCへのデータ転送方式をストリーム転送式としたことで、1スペクトルの測定時間を1秒まで短縮した。
(2)キラル蛍光分子プローブの開発とタンパクおよび細胞計測
 Eu(V)イオンなどを中心金属とする強発光性希土類錯体にタンパク質としてBSA、フィブリン、ガゼインなどを導入し、質量分析により導入サイトを確認した。また、円偏光発光の計測に成功した。また、キラルおよびアキラルな希土類錯体につき、円偏光非対称性を検討し、およそ5×10−3であることを示した。
V.評価
 タンパク質やDNAなど生体高分子を含む分子の光学活性を、定量的に解析する顕微鏡の開発を目指している。開発は順調に進捗しており、当初計画時に設定したマイルストーンは全て達成し、今後も順調に開発が進むと期待される。今後はこの顕微鏡を利用する主な利用者層を特定し、ニーズの把握、ユーザーコミュニティの形成を行いつつ、開発を着実に推進すべきである。[A]


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