資料4

開発課題名「レドックス動態の磁気共鳴統合画像解析システム」

(機器開発プログラム:領域特定型 【実験小動物の生体内の代謝の個体レベルでの無・低侵襲的解析、可視化】)

開発実施期間 平成16年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  内海 英雄 【九州大学 副学長】
中核機関 :  九州大学
参画機関 :  日本電子(株) 、崇城大学 、(株)日立メディコ 、富士電機システムズ(株)
三菱ウェルファーマ(株) 、(独)放射線医学総合研究所
T.開発の概要
 生活習慣病に深く関わる「活性酸素・フリーラジカル・レドックス」の動態を無侵襲画像解析するために、高分解磁気共鳴統合画像解析装置および最適化プローブ剤からなるシステムを開発する。本システムを種々の酸化ストレス疾患や脳機能障害のモデル実験動物に適用し、レドックス動態・機能障害の無侵襲画像解析手法を確立することで、生活習慣病・脳機能障害の発症機序の解明と新たな診断法の確立・医薬品の開発に貢献する。
U.事後評価における評価項目
(1)統合型磁気共鳴画像解析装置の制作
 既存装置に比べて信号雑音比約400倍の明瞭な画質を有するラジカル分布画像が得られる、磁気共鳴統合画像解析装置を開発した。実験動物の架台に周回型移動方式を採用することにより、止まることなく常時移動する測定対象をMRI撮像可能であることを見出した。
(2)新規造影剤の開発
 14N、15N標識体、さらにD置換体ニトロキシルラジカルを高収率で合成でき、またピペリジン骨格の2、6位を容易に置換できる新規合成法を確立し、新規ニトロキシルラジカルを10種類以上合成した。
(3)実験動物モデルの検討
 潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、移植腫瘍などの酸化ストレス疾患モデル動物で、膜透過性の異なる14N、15N標識造影剤を用いた同時画像化に成功し、レドックス変動を観察した。また、統合失調症モデル動物について、ドーパミンの代謝過程で起こるレドックス変動を検出した。
V.評価
 ESRで励起した試料を物理的に移動してMRI装置で測定するという卓越したアイディアに基づき、高分解磁気共鳴統合画像解析装置および最適化プローブ剤からなるシステムの開発に成功した。本システムを種々の酸化ストレス疾患や脳機能障害のモデル実験動物に適用することにより、生活習慣病・脳機能障害の発症機序の解明と新たな診断法の確立・医薬品の開発が期待される。
 機器開発は順調に達成されたが、特に、測定対象の移動を等速度回転としたことにより連続的な計測を実現としたことは、技術的なブレークスルーであり実用上重要な意味を持つ。また、新規造影剤の開発及び実験動物モデルの検討を通してレドックス動態・機能障害の無侵襲画像解析手法の確立にも努めており、また、大学発ベンチャーを設立してシステムの早期実用化を目指している点も高く評価できる。今後も市場競争力や知的財産面での優位性に考慮しつつ、開発成果の事業化に向けた取り組みを行うことが引き続き期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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