資料4

開発課題名「高分解能眼底顕微鏡」

(機器開発プログラム:領域非特定型)

開発実施期間 平成17年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  東條 徹 【(株)トプコン 執行役員、生産グループ統括】
中核機関 :  (株)トプコン
参画機関 :  大阪大学
T.開発の概要
 医療分野で使用される眼底カメラの高精度・高機能化を目指す。生体網膜上の視細胞を観察することは、様々な要因から現状では困難である。本開発では、眼球の動きを把握できるセンサーと、完全トラッキング高分解能光学システムを新たに開発するとともに、補償光学系技術・分光分析技術を更に高精度化し、約2μmの視細胞を観察できる高分解能眼底顕微鏡を開発する。これにより、生体網膜組織の観察、網膜の活性化評価等を可能とし、医療分野の発展に寄与する。
U.事後評価における評価項目
(1)デフォーマルミラーと眼球運動測定センサーを用いた補償光学系の開発
 デフォーマブルミラー(DM)は、目標とした収差10次補正および人眼の残留収差RMS≦0.05μmを達成した。波面センサー開発では、目標精度(RMS≦0.02μm)以下のRMS 0.007μm程度の検出精度を得た。しかし、DMと波面センサーによる補償光学システムとしての応答速度は、約18Hzで目標(≧50Hz)未達であった。
(2)高分解能光学系の開発(視細胞観察)
 模型眼眼底観察では補償光学の起動により目標の2μmは解像したが、人眼では目標を達成できなかった。しかし、光学系のフレアー対策や照明方法の変更により、視細胞と確認できる輝点を観察することができた。精動(視線)トラッキングは、応答≧50Hzを目標とし、人眼観察においてトラッキングが可能であること、精度は約34μmであることを確認した。精度は目標値(≦±1μm)に達しなかったが、臨床試験への適用を目的に、人眼のアライメント(粗動トラッキング)→収差補正→眼底撮影まで、被験者の瞬きに対応した一連の動作システムを構築した。
(3)機能イメージング(分光機能)技術の開発
 上記で取得した人眼眼底画像では視細胞が鮮明でなく、機能イメージング開発を進める段階までに至らなかった。
V.評価
 本開発は、診断医療分野で使用されている眼底カメラを高精度・高機能化することにより、これまで困難とされてきた網膜の視細胞を生体で観察できる高分解能顕微鏡を開発しようとするものであり、実用化できれば画期的な診断機器としての利用が期待される。
 静電駆動型DMによる補償光学技術と高感度波面センサーによる収差計測技術の開発は成功し、眼球の動きを把握できるセンサーと完全トラッキング技術を確立した。また、これら要素技術の開発課程で得られた成果を眼底カメラやOCTなど他の眼科機器への横展開が可能となった。しかし、視細胞の観察という最終目標については、開発チームの十分な努力が認められるものの、達成できなかった。チャレンジングな課題ではあるが、課題解決のための方向性は見えており、これまでの成果を活かして、引き続き開発を継続することを期待したい。
 本開発は、本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する[B]。


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