資料4

開発課題名「顕微質量分析装置の開発」

(機器開発プログラム:領域特定型 【生体内・細胞内の生体高分子の高分解能動態解析(原子・分子レベル、局所・3次元解析)】)

開発実施期間 平成16年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  瀬藤 光利 【浜松医科大学 分子イメージング先端研究センター 教授】
中核機関 :  浜松医科大学
参画機関 :  (株)島津製作所、大阪大学、(財)癌研究会、(株)三菱化学生命科学研究所
T.開発の概要
 質量分析のイオンビームによって病気の原因物質を見て取る「顕微質量分析装置」を開発する。この装置は、未知の物質を生体内から発見と同時に同定できるという、既存の装置にない新性能を有し、蛋白質や核酸、脂質、糖鎖、それら同士の修飾、未知の物質等、までも単一細胞内レベルで対象とすることができる。この手法は患者の病理組織での異常の原因をその場で見ることができるため、迅速な診断や医薬、治療法の開発に貢献することが期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)イオン化システムの開発・作製
 高解像度顕微鏡と、高精度ステージを備えた顕微照準システムを開発し、イオンの質量分析計への取り込みを阻害せずに、イオン化用紫外レーザーを微小に集光して試料に照射できる光学系を開発した。空間解像度1μm以下の性能を持つ光学顕微鏡を搭載し実際に、生体サンプルを用いて10μmピッチで走査範囲250×250(62,500ピクセル)でのイメージングを行い、2.5mm×2.5mmの広い領域での高精細イメージが得られている。
(2)質量分析部の開発・作製
 駆動波形をデジタル的に周波数制御できるデジタルイオントラップと、飛行時間型質量分析計(TOF)を結合したイオントラップ−TOFシステムを開発した。さらに空間発散性を抑えて時間収束させることができる新しいコンセプトのマルチターンTOFを、シミュレーションに基づき開発した。デジタルイオントラップと組み合わせたイオントラップ−TOFシステムとして評価を行い、300周回で質量分解能115,000が得られることを確認した。
(3)データ処理システムの開発
 試料処理法の予想以上の飛躍的進展とハードウェアの高精度化により生データが切れ味よくピーク分離されており、データ処理システムの負担が軽くなり早い段階で目標としていたダイナミックレンジを達成した。
V.評価
 デジタルイオントラップ、マルチターンTOF、大気圧下での微小部高感度イオン化等、全ての要素開発を国産技術のみで開発することに成功したことは高く評価される。
 機器開発は順調に達成され、イオン化用紫外線レーザーのスポット径5μm、レーザー1照射点あたり検出感度が10amol、デジタルイオントラップによる質量分離能5,000、さらにマルチターンTOFとデジタルイオントラップと組み合わせによる質量分解能115,000等と意欲的な取り組みを進めている点は高く評価できる、世界のトップレベルの機器ということができる。今後もユーザーの拡大に努め、データベースを充実することで、早期の実用化が期待できる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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