資料4

開発課題名「質量分析用超高感度粒子検出技術」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成17年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  大久保 雅隆 【(独)産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門 副研究部門長】
中核機関 :  (独)産業技術総合研究所
参画機関 :  浜松医科大学、コアックス(株) 、岩通計測(株)
T.開発の概要
 質量分析は、分子量を電荷数で割った比(m/z)によって粒子を分離分析する計測技術である。質量分析という名前とは異なり、m/z分析である。このため、同じm/zをもつ異なるイオンは分離できないといった原理的限界や、巨大なタンパク質分子に対して検出感度が極めて低いという問題があった。こうした従来の質量分析の限界を突破することを可能にする超伝導粒子検出器を開発する。この要素技術は、イオン反応といった基礎・環境科学の研究現場から、創薬(抗体)といったものづくり現場での貢献が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)実用レベルのハイスループット分析を可能とする超伝導検出器の開発
 粒子の運動エネルギー測定が可能なアレイ検出器において、動作可能な素子の割合を84%まで高めることができ、目標の有感面積4mm2を僅かに下回ったが、世界最大の有感面積 3.4mm2を達成した。以前、3時間掛かっていた測定時間を実用レベルの3分まで短縮できた。サブナノ秒の時間分解能を有する超伝導分子検出器の開発に成功した。
 国際会議での招待講演、海外の学会のニュースに掲載されるなど、超伝導を使った分子検出では産総研グループが世界トップとのコメントを得た。
(2)巨大分子検出と幅広いエネルギーの粒子検出開発
 超伝導検出器による運動エネルギーの測定から、抗体医療で注目されている免疫グロブリン試料中に存在する半分子等のフラグメントを同定することに成功した。 今まで分析が不可能であったm/z=14の14N2++14N+の分離分析、中性粒子の直接質量分析に成功した。
(3)信号処理系の開発
 NbTi超伝導セミリジッドケーブルを開発した。極低温での熱伝導を評価し、100本の同軸ケーブルで、3K-0.3K熱伝導10μW以下、数1GHz対応を、0.86mmφのNbTi超伝導セミリジッド同軸ケーブルで実現した。分子の到来時刻と運動エネルギーの情報を同時に取得できるデジタル処理系を実現した。
V.評価
 超伝導アレイ検出器を完成させて、m/z分析ではない真の質量分析の実現、巨大分子の検出、中性分子の検出を可能にした。このプロジェクト開発を通じて将来、他の研究にも活用が期待出来る多くの要素技術を開発した。今後は開発成果の事業化へ向けた取り組みを引き続き行うことが期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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