資料4

開発課題名「生体計測用・超侵達度光断層撮影技術」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成17年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  大林 康二 【北里大学 大学院医療系研究科 教授】
中核機関 :  北里大学
参画機関 :  ---
T.開発の概要
 近赤外光を用いて無侵襲的に生体の断層画像を超高速、高分解能で測定する光断層撮影技術(OCT)を開発する。開発では、光源に高速で波長走査が可能な超周期構造回折格子型DBR(SSG-DBR)レーザーを用い、試料光と参照光を干渉させる。干渉信号のフーリエ解析等の信号処理により光路差および反射率を求め、光走査および波長走査により3次元断層画像が得られる技術を確立する。
U.事後評価における評価項目
(1)超高速光コムOCTの開発
 これまで通信波長でしか実証されていなかった光ディマルチプレクサーをOCTにとって最適なすべての波長帯(1.55μm帯、1.3μm帯および1.05μm帯)で実現した。超高速光コムOCTの計測速度の指標であるA-走査率は、目標とした60MHzを3波長帯とも実現できた。2次元断層画像を取得する速度のフレームレートは、目標通り16kHzを実現した。3次元立体断層画像取得速度も目標とした256フレームでの62.5Hzを達成した。
(2)超侵達OCTの開発
 LLバンドのSSG-DBRレーザーを用いて侵達度向上の開発を進めた結果、抜歯で光学距離約7mm、豚の食道で光学距離約2.2mm、豚の気管で4.3mmが確認できた。これらは、一般に用いられている1.3μm帯の周波数走査OCTの侵達度に比べて約2倍の深度である。
(3)高分解能OCTの開発
 S、C、L、LLの4つの周波数帯のSSG-DBRレーザーを用いて約140nmの走査範囲を実現し、これらを接続して用いた結果、空気中の分解能7.9μm(組織中の分解能5.6μm)が実現できた。
V.評価
 今までにない超高速、超侵達および高分解能の光断層撮影(OCT)技術を開発した。これまでのOCTは眼科領域での利用に限られていたが、今回の技術開発の結果、より多くの医療現場における診断技術の高度化に寄与することが期待される。
 要素技術の開発は順調に達成され、当初設定していた超高速OCT、超侵達OCTおよび高分解能OCTを開発するというすべての目標を達成した。また、新しい超高速光コムOCTの着想とその開発により、飛躍的に計測速度を向上させた点は高く評価できる。この成果により、検査時の被験者の苦痛を最小限度にできるだけでなく、表面から深いところにあるガン組織などの3次元断層画像が鮮明に得られる道が開かれた。事業化・商品化についても既に見通しがたっており、内視鏡診断装置、歯科用診断装置および前眼部診断装置としての実用化が大いに期待できる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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