資料4

開発課題名「疾患早期診断のための糖鎖自動分析装置開発」

(機器開発プログラム:領域非特定型)

開発実施期間 平成16年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  西村 紳一郎 【北海道大学 大学院先端生命科学研究院 教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  (株)日立ハイテクノロジーズ、北海道大学(医)、弘前大学、慶應義塾大学
T.開発の概要
 一滴の血清などから、全自動で高スループットで糖鎖を分析する、世界初の「糖鎖自動分析装置」を開発する。癌や各種生活習慣病などで発現が変化する糖鎖の異性体構造を含む20種類以上(50種類を達成)の糖鎖構造と量比変化の解析を実現する。医療費の高騰や高齢化社会など、疾患予防診断の必要性が益々増大する現代の社会環境において、疾患によって変化する糖鎖の解析は予防診断上不可欠な技術であり、本技術の開発により社会貢献を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)微量の生体試料から分析可能な糖鎖を遊離する前処理技術の開発
 酵素によるN型糖鎖遊離の反応条件を確立した。特に、新規可溶化剤の導入が有効であった。なお、下記(2)の高捕捉容量の担体を用いることにより、血清グルコース除去という前処理が不要となり、再現精度の向上、処理速度の高速化、糖タンパク質レベルのロスを完全に回避できた。
(2)糖鎖精製技術の開発
 少量の血清から糖鎖を分析し、自動化が可能な精製法を確立した。捕捉分子としてアミノオキシ基またはヒドラジド基を表出する機能性高分子(ビーズ)の開発を進め、二種類のビーズの開発に成功した。これらのビーズを用いた糖鎖の定量的な捕捉、夾雑成分の洗浄方法を確立し、前処理の自動化に成功した。
(3)糖鎖自動分析装置の開発
 1日あたり15検体の処理を行うことを装置開発の当初の目的としたが、上記の糖鎖遊離技術、精製技術の確立、前処理の自動化の達成、LC-MSに代わるMALDI-TOF-MSの導入で、血清1μLを自動分注し、96検体を1日で処理することを実現した。また、MSスペクトルから糖鎖プロファイルを解析するソフトを開発して、臨床ユーザーの協力の下、本装置の医療における有用性を示すことに成功した。
V.評価
 糖鎖のみを網羅的、かつ定量的に捕捉できる機能性高分子(ビーズ)の開発、これを用いた前処理方法の確立と自動化により、少量の血清中の糖鎖を網羅的に高スループットで分析する自動前処理装置を中心とする分析システムの開発に成功した。この分析システムは医療分野における各種疾患マーカーの探索への応用が期待される。
 機器開発は順調に達成され、これを構成する要素技術であるビーズについては既に市販もされている。事業化に向け、本機器のユーザーコンソーシアムを立ち上げ、データベースの構築を進め、既に数種類の疾患に対して糖鎖プロファイルからの診断可能性を提案するなど意欲的な取り組みを進めている点は高く評価できる。今後もユーザーの拡大に努め、データベースを充実することで、早期の実用化が期待できる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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