チームリーダー : |
伊永 隆史 【首都大学東京 大学院理工学研究科 教授】 |
中核機関 : |
首都大学東京 |
参画機関 : |
(株)堀場製作所、(株)山武
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- T.開発の概要
- 試料を真空中で中性分子に変換し、リチウムイオンを気相で付着させることにより、解離(開裂)させずに1価正イオンにする。これにより、1成分を1ピークで示す質量スペクトルが得られ、全成分のプロファイルを検出できる。誘導体化・成分分離等が不要となり、不安定な金属錯体・ラジカル等を含む、浮遊ナノ粒子・固体・液滴・気体等の試料を前処理なしに、極微少量で測定できる世界唯一の先端的質量分析装置を開発する。
- U.事後評価における評価項目
- (1)試料の前処理技術開発について
- 本開発においてリチウムイオンを気相で付着させる手法は未完成となった。新たに開発した液滴リチウムイオン付加イオン化法は前処理を必要としない方法であり、その意味では当初目的とは異なる手法であるが、優れた成果である。また、リチウムイオン付加に加え、銀イオン付加により一部リチウムでも検出不可能であった炭化水素系化合物のソフトイオン化にも成功した。
- (2)測定可能な化学種(成分)について
- 化学種に関しては、新たな液滴リチウムイオン付加イオン化法によって質量分析でイオン化が難しいといわれている炭化水素系(アルカン、アルケン)について非破壊で、イオン化に成功している。
- (3)装置開発について
- 当初目的とした気相によるイオン化装置は未完成となったが、新たな液滴リチウムイオン付加イオン化法機器は、気相によるイオン化装置と同様なサイズとなった。
- V.評価
- 本開発は、付着力の大きなリチウムイオンを気相で付着させる吸着イオン化質量分析装置の開発であり、アイデアとしては広く知られた手法である。本開発において微量環境有害物質の高感度分析を目指したが、残念ながら気相法では達成したとは言い難い。問題点として、リチウムイオンと分析種と効率よく反応させる手法の開発、並びに反応した後、効率よく内部エネルギーを緩和させ安定化を図る手法の開発が重要であったと思われる。
- 本開発は、当初の開発目標を達成できなかったと評価する。今後、液滴リチウムイオン付加イオン化法に関して、着実な開発を進められることを期待したい。[C]。
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