資料4

開発課題名「非標識ハイスループット相互作用解析装置の開発」

(平成19年度採択:機器開発プログラム【領域特定型】
リアルタイム・ハイスループット観察、リアルタイム制御、
又はものづくり環境適応可能な計測分析システム)

チームリーダー :  民谷 栄一 【大阪大学大学院 工学研究科 教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  武蔵エンジニアリング(株)
東京工業大学
田中貴金属工業(株)
(有)バイオデバイステクノロジー
T.開発の概要
 医療や創薬において、多検体を網羅的かつハイスループットに解析するため、これまでDNAチップやプロテインチップなどのバイオチップが開発されている。しかし、従来のバイオチップでは検出・解析に長い時間を要し、蛍光分子などの特定標識剤を必要とすることから、高感度かつ非標識で解析可能な装置が求められている。本開発ではナノ材料より発現される新規特性を利用した非標識ハイスループットバイオチップおよび相互作用解析装置の開発を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)コア・シェル型ナノ粒子層基板を用いたLSPR励起効率の向上
 電気泳動堆積法(EPD)を用いたナノ粒子形成法を考案し、既存技術と比べて高効率かつ短時間でナノ粒子形成を行うことを可能とした。また、LSPR(局在表面プラズモン共鳴)励起効率も従来の作製方法よりも向上した。吸光光度は1.1(abs)となり、LSPRの光学特性CV値も3.3%以内となった。また、モデルタンパク質としてフィブリノーゲン吸着を測定したところ、検出限界は10pg/mlと従来より高い値を得た。
(2)バイオチップ作製用材料の安定供給
 スパッタリング法により作製したチップの表面粗さは0.7nmとなり、真空蒸着法で作製した基板と比較して良好な歩留まり、平滑性をもつ基板が得られるようになった。また、結晶面制御も可能となり、作製可能枚数の向上も可能となった。
(3)ディスペンサーの試料溶液塗布性能向上
 一連の操作に係る作業時間の短縮のため、チップ上への試料溶液塗布速度を向上させたところ、単一液剤で500スポットへの塗布を415秒で達成した。また、試料溶液の塗布制度について滴下量を80nL〜110nLとした場合、CV値は5〜6%以内となった。
(4)その他
 新たな取り組みとして、金ナノコアシェル型LSPR基板にマイクロ流路を組み込んだフロー型チップを作製し、インシュリンの抗原抗体反応の定量測定に成功するなど、リアルタイムLSPR法計測の可能性を示した。
V.評価
 バイオチップ開発についてLSPR量産化技術を開発し、従来の方法よりも高い検出限界、安定した測定を行うことができた。加えてLSPR基板上にマイクロ流路を組み合わせたリアルタイムLSPR計測の可能性を示した。
 開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は達成できると期待される。今後は、応用先を明確にし、想定されるユーザーの反応も踏まえて装置の改良を行い、着実に推進すべきである[A]。


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