資料4

開発課題名「バイオ技術による迅速・高感度・簡易アスベスト検出キット開発」

(平成19年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー :  黒田 章夫 【広島大学 大学院先端物質科学研究科 教授】
中核機関 :  広島大学
参画機関 :  DSファーマバイオメディカル(株)
T.開発の概要
 安全な社会構築のため、アスベストの迅速・高感度・簡易検出技術が求められている。現在、アスベストの検出は、位相差顕微鏡による方法が最も多用されているが、アスベスト繊維の判定が難しい問題や、超微細アスベストは検出できない等の問題がある。電子顕微鏡やX線を利用した方法は優れているが、高価で時間がかかり、簡便な方法ではない。開発チームが発見した、アスベストに結合するタンパク質を用い、迅速・高感度・簡易アスベスト検出キットを開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)アスベスト検出の高度化
 酵素改良によってアルカリフォスファターゼ活性が100倍に向上した。実際にフィルター上でのクリソタイル10ng(改良前の検出限界:1μg)を検出した。
(2)クリソタイル以外のアスベスト検出
 アモサイト、クロシドライト結合タンパク質を選定し、目標の1μgよりも少ない10ngのアモサイト、クロシドライトを検出できた。これまでできなかったロックウール中の1%アモサイト、クロシドライトが検出可能となった。
(3)目標に掲げていなかった成果
 アスベストが存在するフィルター上に蛍光ラベルしたDksAを塗布するだけで、そのまま蛍光顕微鏡下でアスベスト繊維が非常にクリアに観察できることがわかった。従来、位相差顕微鏡による方法では透明化処理、低温灰化処理が必要であり、簡便性が向上した。さらに走査型電子顕微鏡を用いて比較した結果、数十μmのクリソタイル単繊維が蛍光による検出できることがわかった。さらに標準品とされる無機繊維を用いて基質特異性を調べた結果、シリコンカーバイトと交差するものの、ほぼクリソタイル特異的であることがわかった。また、X線回折では区別できない同じ原子組成のクリソタイル、アンチゴライトをDksA-APを用いた方法により、明確に区別できることがわかった。本方法による、蛇紋石由来モルタル混和剤の中のアスベスト分析が容易に行える可能性が高まった。
V.評価
 電子顕微鏡観察では様々なものを見ることができるが、アスベストのような細い繊維を見つけ出すことは、極めて困難であり、蛍光により特異的に検出が可能な蛍光顕微鏡法は極めて有用であると言える。また、本方法は可搬であることも重要である。
 開発は極めて順調に進行しており、当初目標を上回る進捗が見られる。最終目標を達成する可能性は高く、今後は開発成果の早期の実用化を強く意識しつつ、積極的に推進すべきである。[S]


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