資料4

開発課題名「超1GHz NMRシステムの開発」

(平成18年度採択、機器開発プログラム
【開発領域】ナノレベルの物質構造・状態3次元可視化(機能素子・材料、及び細胞内物質・生体高分子))

チームリーダー :  木吉 司 【独立行政法人 物質・材料研究機構 超伝導材料センター マグネット開発グループリーダー】
中核機関 :  独立行政法人 物質・材料研究機構
参画機関 :  株式会社 神戸製鋼所
独立行政法人 理化学研究所
日本電子 株式会社
T.開発の概要
 NMR装置の強磁場化を加速することで、従来困難であった生体高分子中の酸素、金属原子等の四極子核の計測が可能となり、新薬創製等幅広い分野での応用が期待される。本開発では、これまでNMR磁石には使用が困難とされてきた酸化物系超伝導線材を計測技術の高度化を含めた磁場安定化システムの開発により適用可能とすることで、1GHzを超える24TNMRシステムを完成し、その有用性を実証する。
U.中間評価における評価項目
(1)920MHz NMR磁石用酸化物超電導系内層コイルの設計
 設計の基礎となる線材仕様、コイルパラメータ、負荷曲線を確定するとともに、巻枠の基本設計図を完成した。
(2)酸化物超電導線材試作コイルの製作・評価
 Bi-2223線材短尺試料について線材幅・補強材の様々な組み合わせに対して、0〜30Tの磁場領域で、コイル設計に使用できる信頼性の高いデータを取得した。
(3)中磁場NMRによる磁場安定化実証
 17O標識したトリペプチド(トリプトファン・グリシン・グリシン)粉末サンプルの17Oスペクトルが得られた。固体NMRでアダマンタン粉末サンプルの、電源駆動モードにおける13Cスペクトル(1時間積算値)が得られた。
(4)超安定化励磁電源の製作
 世界最高レベルの安定度の直流電源を製作し、電源駆動モードで溶液NMRと固体NMRで、長時間(〜7時間)の高分解能NMR計測を確認した。
(5)分光計の開発
 磁場安定化外部ロック機構付きの500MHz MASプローブ(計測核13C、17O、デカップリング核1H)を製作し、「中磁場NMRによる磁場安定化実証」試験に使用し、電源駆動モードで長時間の17O NMR計測を確認した。
V.評価
 NMR装置の強磁場化を加速することによって、従来困難であった生体高分子中の酸素、金属等の四極子核の計測が可能となるが、本開発では、従来NMR磁石には使用が困難とされてきた酸化物系超伝導線材を、磁場安定化システムの開発により適用可能とすることを目指しており、これにより新薬創製等幅広い分野での応用が期待される。
 開発は計画通り進行しているが、当初目標の達成にはなお技術的課題が予測される。今後は、できる限り早期に、24T超伝導磁石の高磁場テストを実施し、同時に高磁場での電流安定化システムの完成を進めることが必要である。超高磁場超伝導磁石の開発には、例えば大径・短尺コイルによる高磁場テストによってBi系線材の基本性能の検証を行った上で、着実に推進すべきである。[A]


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