資料4

開発課題名「超音波計測連成解析による超高精度生体機能計測システム」

(平成18年度採択:機器開発プログラム
【開発領域】ハードウェアによる計測限界を突破するためのコンピュータ融合型計測分析システム)

チームリーダー :  早瀬 敏幸 【東北大学 流体科学研究所 所長】
中核機関 :  東北大学
参画機関 :  (株)アールテック
東北大学(情報シナジーセンター、先進医工学研究機構)
T.開発の概要
 小動物を用いた心臓循環器系の先端研究において、超音波計測結果と計測連成解析手法を開発し、循環器系疾患の機序や治療法の解明に不可欠な血流の3次元構造や壁せん断応力などの血流情報の精度を飛躍的に向上させる。本計測技術開発により、循環系や癌の先端研究が大いに進展することが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)計測連成解析手法の開発
 計測連成流体・構造解析について実行可能なプログラムを作成した。軸対称円筒座標系、2次元、3次元直角座標系上で超音波計測結果のフィードバック機構を備えた、実行可能なプログラムを開発した。本プログラムはスパコンでリアルタイム計算を実現し、解析精度は通常のシミュレーションの15倍以上の精度となった。
(2)3次元血管形状抽出
 超音波計測の断面画像と超音波プローブの位置計測データを基に、3次元の血管形状を抽出し計算格子上に配置する実行可能なプログラムを作成した。血管形状の抽出精度について、超音波計測と同一の精度(空間分解能30μm)で血管の3次元構造を再現できた。
(3)状態量表示プログラム
 ドップラー速度ベクトル、フィードバック値、血管形状の輪郭、表面、3次元速度ベクトル分布の解析結果、血管剪断応力の算出値を表示可能なプログラムを作成した。これらの状態量はリアルタイム表示が可能である。
(4)スパコンインタフェース
 制御用パソコンとスパコンが通信可能なインタフェースを設計し、リフレクティブメモリとイーサネットでの実装を完了した。このインタフェースは通常のLANに比べて37.5倍の通信速度を達成した。
(5)検証実験
 マウス血管の弾性率を1%以内で、音速と減衰率の音響特性を2%以内でそれぞれ再現するPVA材料を製作するとともに、30μm以上の血管を再現するラットの3次元血管構造データを構築した。
V.評価
 小動物の非侵襲かつリアルタイムの画像評価が可能な最高水準の超音波観察結果とシミュレーションとの比較フィードバックによって、生体機能のより精密な計測を可能とするものであり有意義である。応募時の開発領域が「ハードウェアによる計測限界を突破するためのコンピュータ融合型計測分析システム」であって、ソフトウェア開発がもともと中心になっているが、計測とシミュレーションを統合して計測の範囲を拡げ未知の量を計測するモデル構築と実際の血管状況を十分に正しく見通せるシミュレーションとの間の相関については今後検討すべき課題である。特に、超音波ドップラーのデータとシミュレーションとの融合により誤差を抑制し、数パーセント以内で計測するという目標の実現可能性が見えていない。
 今後は開発全体のスピードアップを図ると共に、効率的、効果的に開発を推進すべきである。[B]


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