チームリーダー : |
高井 幹夫 【大阪大学 極限量子科学研究センター 教授】 |
中核機関 : |
大阪大学 |
参画機関 : |
株式会社 エー・アンド・デイ
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- T.開発の概要
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200keV程度の中エネルギーイオンビームを10nm以下に集束したイオンナノプローブを形成し、このイオンナノプローブの局所チャンネリング・後方散乱イオンを飛行時間(TOF)計測する。そのマッピングにより3次元可視化を行い、ナノ領域の不純物同定、元素分布、組成、結晶性、表面界面状態の非破壊計測技術の装置化・実用化を目指す。最終的に、分解能が10nm以下で非破壊3次元分析を可能とするテーブルトップサイズの装置を実現する。
- U.開発項目
- (1)MCPアレイによるTOF-RBS信号処理技術の開発
- 4つのMCPより個別に出力されるシグナルを時間分解能の低下なしに加算し、TOFマルチスケーラーに入力可能な計測系を完成させ、局所領域をラスタースキャンすることにより3次元データを空間分解能10nm以下で1時間以内に取り込む計測ソフトウェアを完成させた。
- (2)200 kVイオン集束カラムおよびカラム制御電源開発
- 耐圧200 kVで実用150 kVのテーブルトップ仕様のイオン集束カラムを完成させ、マウス操作によるイオン集束カラムのパラメーター制御可能なソフトウェアを完成させた。
- (3)200 kVイオン集束カラムとMCPアレイを用いたTOF-RBS計測装置の開発
- 開発したイオン集束カラムと既存の計測チャンバーの結合を行い、イオンビーム径10nm以下を達成した。MCPノイズ低減のためMCPハウジングの新たな設計と製作を行いリンギングフリーのシグナルを得ることに成功した。開発したイオン集束カラム、3次元計測システム及びソフトウェアにより標準物質の計測を1時間以内に計測可能な装置を完成させた。
- V.評価
- 200keV程度の中エネルギーイオンビームを10nm以下に集束したイオンナノプローブを形成し、このプローブを試料に照射することにより局所チャンネリング・後方散乱イオンを飛行時間計測する開発であり、RBS-TOFデータのマッピングによる3次元可視化は、ナノ領域での非破壊状態分析方法として実用性が期待されている技術開発である。
- 要素技術開発としては種々の成果を得ており、特に200keV集束イオンビームカラムの開発は当初目標とした性能を順調に達成した。しかし、装置開発については、1次元像においても所期の目標の空間分解能は十分に達成されているとは言い難く、またRBS-TOFデータも十分に得られておらず、実用化に向けて今後さらなる検討・開発が必要と考えられる。
- 本開発は、計測分析機器の開発という本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する。B
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