資料4

開発課題名「X線位相情報による高感度医用撮像技術の開発」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  百生 敦【東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  兵庫県立大学
T.開発の概要
 X線位相情報を利用することにより、生体軟組織に低感度な従来のX線透視画像に比べ感度を最大約1,000倍改善したX線撮像技術を開発する。これまでSR光源からのX線を用いた研究が行われてきたが、医療応用などの実用への鍵となる小型X線源の利用が難しいことが問題であった。本開発は、LIGAプロセスで製作するX線回折格子と小型X線源を用いる新しい光学設計が特徴であり、非破壊検査など医療分野を筆頭としたX線画像が関係する分野での質的変革を目指す。
U.開発項目
(1)X線タルボ干渉計の設計とそれによる位相イメージング
 100mm角の吸収格子により、タルボ干渉計として100mm角の視野を得ることに成功した。空間分解能については、シンクロトロン放射光では目標の50μm を大きく超える15μmを実現し、マイクロフォーカスX線源では目標値の解像度を達成した。感度についても作製した回折格子によりシンクロトロン放射光によって目標値を遙かに上回る密度分解能が達成された。その後、通常のフォーカスX線源を用いるタルボ・ロー干渉計の構築に開発の重点を移行している。
(2)X線タルボ干渉計用回折格子の製作
 回折格子の開発は、当初、有効面積20mm角からスタートし、4インチウェハ上に60mm角、さらには6インチウェハ上に100mm角へとスケールアップしX線格子の作製を進め、目標の有効面積を実現した。また、格子間隔、アスペクト比(格子間隔:格子高さ)も目標値を達成した。
V.評価
 X線位相情報を利用する本X線撮像技術開発は、生体軟組織に低感度な従来のX線透視画像に比べ最大約1,000倍の感度を持ち、医療分野をはじめとしたX線非破壊検査において、質的変革をもたらす極めて重要なものと期待される。
 要素技術開発は順調に推進され、シミュレーターの開発、回折格子の製作、回折格子を用いた位相イメージングの開発等、タルボ効果を利用した独創的な位相像による医療応用のためのX線装置の開発に向けて目標を十分に達成し、実用化も見込める優れた成果が得られたものと判断される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。A


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