資料4

開発課題名「4探針STMの制御系および多機能ナノチューブ探針の開発」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成16年10月〜平成19年3月

チームリーダー :  長谷川 修司 【東京大学 大学院理学系研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  大阪大学
株式会社 ユニソク
T.開発の概要
 走査トンネル顕微鏡(STM)に4本の探針を組み込み、お互いの位置関係を認識しながら独立に駆動して電気計測を可能とする「4探針STM制御系」、および金属層や誘電体層で被覆して多様な機能をもたせた「被覆型カーボンナノチューブ探針」を開発します。これにより次世代ナノテクノロジーのためのナノスケール電気計測法として「4探針STM法」を確立し、さらに今までにない画期的な「グリーン関数STM法」を実現します。
U.事後評価における評価項目
(1)4探針STM制御系の開発
 走査電子顕微鏡での吸収電流像を利用した探針位置の自動認識・制御法を考案し、探針間隔20 nmの制御を実現した。また多機能ヘッドアンプの開発によってSTM/STSモードと4探針プローブ電気伝導測定モードの実現およびモード切替機能を完成した。
(2)多機能ナノチューブ探針の開発
 探針・ナノチューブ接合部の接触抵抗の低減・安定化は白金イリジウム被膜によって実現し、4探針STM中での直接測定で確認した。また、コバルトシリサイド・ナノワイヤの電気抵抗の計測に実際に安定して使用できた。
 強磁性体(CoFe)被膜カーボンナノチューブ探針を製作し、それが磁性を保持していることを磁気力顕微鏡像の観察によって確認した。
V.評価
 走査トンネル顕微鏡(STM)に4本の探針を組み込み、お互いの位置関係を認識しながら独立に駆動して電気計測を可能とする「4探針STM制御系」、およびカーボンナノチューブを金属層や誘電体層で被覆して多様な機能をもたせた「被覆型カーボンナノチューブ探針」の要素技術開発は、次世代ナノテクノロジー分野における画期的な電気計測手法となることが期待される。
 「4探針STM制御系」及び「被覆型カーボンナノチューブ探針」の要素技術開発はそれぞれ順調に達成され、独創的な発想に基づくSEM吸収電流像による探針位置検出機構を備えた統合型4探針制御系の開発に成功した。また金属(白金イリジウム)、絶縁体(酸化珪素)、磁性体(コバルト鉄)をレーザ蒸着した、実用に耐えうる多層型カーボンナノチューブ探針の開発にも成功し、これによりナノデバイス開発や生体細胞内計測など、あらゆるナノ領域研究における有力な電気計測手法に応用されるものと期待される。今後は、それぞれの応用目的に合った方法論の構築や改良開発を進め、制御装置と探針の更なる改善が行われることを期待する。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。


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