資料4

開発課題名「中性子スピン干渉原理に基づく中性子スピンエコー装置開発」

(機器開発プログラム:領域特定型「ナノレベルの物性・機能の複合計測」)

チームリーダー :  川端 祐司 【京都大学 原子炉実験所 教授】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  明昌機工株式会社
T.開発の概要
 中性子散乱は、水素、リチウムなどX線で見えにくい原子の動的な過程が見える物質研究に対する最も有力な手段の一つである。その中でも「中性子スピン干渉」は非常にユニークな物理原理であり、これを応用した高エネルギー分解能かつ高中性子強度を同時に実現できる中性子スピンエコー装置を開発する。本装置の開発により、NMR等他の分光法では測定不可能であった遷移エネルギー及び遷移運動量領域における動的過程を明らかにする。
U.中間評価における評価項目
(1)Mieze型スピンエコー装置の製作及び基本性能評価
 振動磁場周波数、利用波長、フーリエ時間、フリッパー間距離の基本性能を達成。目標値を満足している。
(2)大強度共鳴スピンエコー装置用機器開発
 磁気多層膜スーパーミラー開発については目標を大きく上回る全反射臨界角を達成した。
 高周波スピンフリッパー開発についても目標を超える偏極率を達成した。
(3)高分解能共鳴スピンエコー装置用機器開発
 位相補正デバイスを試作し、中性子ビーム径は目標どおり達成した。
V.評価
 本開発課題は、J-PARCの高強度パルス中性子を利用し、中性子スピン干渉原理に基づく世界屈指の中性子スピンエコー装置を開発するものであり、巨大な歳差磁石を必要としないためJ-PARCの限られたスペースに各々特徴のある3台の設置が可能とするものであり、NMR等他の分光法では測定不可能であった遷移エネルギー及び遷移運動量領域における動的過程の研究を広げる期待が大きい。
 開発は計画通りに進行しており、当初目標に掲げた成果は十分に達成できると思われるが、今後は、3台設置の必要性を十分に吟味し、対象となるユーザーの要求性能を明確化しつつ、着実に推進すべきである。


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