資料4

開発課題名「低速・軽イオン励起特性X線の精密分析技術」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  古屋 一夫 【独立行政法人 物質・材料研究機構 超高圧電子顕微鏡ステーション ステーション長】
中核機関 :  独立行政法人 物質・材料研究機構
参画機関 :  株式会社島津製作所
T.開発の概要
 数k〜数十keVのエネルギーを持つ正電荷のイオンを、非電気伝導体の物質に照射することにより発生する低エネルギーのX線を測定することで、これまで極めて難しかった物質中のホウ素、炭素、窒素、酸素等の軽元素を高感度で分析する技術を確立する。本技術は小型の収束したイオンビームを用い、X線の新しい検出方式を実用化することで可能となり、他の分析機器とも容易に組み合わせて使用できる。
U.中間評価における評価項目
(1)軽イオンマイクロビーム形成技術の開発
 軽イオンビームカラムについて、He、Arビームで目標値を達成した。
(2)低エネルギーX線高感度計測技術の開発
 マルチキャピラリX線レンズを用いた分光器を完成し、制御系を含めた分光器性能が目標値を達成していることを確認した。
(3)イオン励起特性X線分光分析法の改良と確立
 種々の物質のイオン励起X線の測定、イオン種とエネルギー依存性の測定を行った。
V.評価
 要素技術課題として、マイクロイオンビーム装置および高感度のX線エネルギー分光検出器に関するハードウェア開発は順調に進捗している。しかし、分析方法の原理については基本的問題が解決されているとは言い難い。
 本開発における種々の試料についての測定結果によれば、定量性および再現性が確立されているとは考えられない。例えば、加速イオンの種類、エネルギーによって測定結果が大きく異なること、試料中の同じ元素に対して大きく異なる結果が得られているからである。
 今後の開発において最優先の課題は、イオンビーム照射によるX線発生現象をシステマチックに解明することであり、測定条件と試料条件を種々に変えて(例えば金属・非金属状態など化学状態依存性)、発生X線スペクトル強度を系統的に測定し、本現象を総合的に理解する必要がある。これは、本現象の普遍性に関する問題であり、照射イオンビームによる帯電―放電効果などによる寄生的な特性X線の発生の可能性も否定できないからである。
 よってマイクロイオンビームによる微小領域の分析や2次元イメージングを求める前に、本現象の理解と、分析技術として原理の確立を優先すべきであり、マイクロビーム生成技術開発等に関する予算については、現象の把握がなされた後の課題とせざるを得ない。
 一方、低エネルギーX線高感度検出器の技術は、要素技術として早急に確立することとして開発計画全体を見直し、効率的、効果的に開発を推進すべきである。


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